鶴岡 丈士

港区立麻布図書館にほど近い場所に工房と店舗を構える鶴岡丈士さん。金・銀細工を手がける三代目の職人さんです。

 

「昭和のはじめから、三代ここで商売させてもらっています。本当は若いころ、別の道に進みたかったんですよ。でも、なかなか芽がでなくてね」

 

心機一転、家業を継ぐ決心をしたのは26歳のときでした。しかし、実際に修行したのは先代のお父様のもとではなかったのだそうです。「何人かの先生に師事しました。外の方が学ぶことが多いし、技術的な面や商品の種類も多様化してきたので、いろいろな技術や知識を吸収することができました」

 

むかしは、帯留めやかんざし、指輪など、金・銀細工品の種類も限られていました。しかし、ファッションが和服から洋装に変り、鋳造技術の向上により、金・銀細工品もブレスレットやイヤリング、ペンダント、ネックレスなど多種多様になってきました。こうしたものは、鋳造によって量産が可能なのです。

 

「手づくりの金・銀細工の魅力は、身につける人に合わせた装飾品にできることだと思います。ご注文をいただくとき、お客様がどんなものを求められているのか、直接お客様とお話ししながら形状や装飾デザインを決めていくんです。ですから、絶対に同じものはできない。世界でただ一つだけの装飾品ということができるのです」

 

この製作スタイルが、初代以来の変わらぬ鶴岡さんの金・銀細工における姿勢です。

 

「手づくりで地金から一品一品を仕上げていく仕事は確かに楽じゃありません。でも、このやり方が好きなんですよ。初代のお祖父さんも、先代の親父も同じ気持ちだったと思います。とはいえ、これからはかたくなに手づくりにこだわるのではなく、これまでのいい部分と新しく素晴しい技術を細工の種類によって使い分けていきたいと思います」

 

金・銀細工は、まさに手先に全神経を集中させて行う細かい仕事です。ミリ単位以下の勝負であることも。「手先の仕事ですから、続けてなければいけないんですよ。何日かでも間をあけてしまうと、手先の感覚が忘れているんです。常に技術を一定にして、いいものを生み出していくためには、手を動かし続けなければ」職人としての高いプライドをもった鶴岡さんならではの言葉です。

 

麻布十番一丁目