株式会社サムライインキュベート

株式会社サムライインキュベート
多くの人を笑顔にできる起業家を支援し、世界を変える。

榊原 健太郎さん

株式会社サムライインキュベート
代表取締役榊原 健太郎さん

ベンチャーキャピタル

 

 

株式会社サムライインキュベート

代表取締役 榊原 健太郎さん

Kentaro Sakakibara

[プロフィール]
大手医療機器メーカーを経て2000年アクシブドットコム(現 CALTA HOLDINGS)入社。2008年に株式会社サムライインキュベートを創業。これまで国内外のスタートアップ累計230社以上に出資し、成長支援を行う。

 

創業期の起業家を支援する会社をつくりたい。

 

サムライインキュベートは、ベンチャーキャピタルとして日本、イスラエル、アフリカ8カ国の計10カ国の起業家の皆さんを支援しています。
ファンドを運営しているので、ファンドで預かっている資金を起業家・スタートアップに投資し、IPO(新規株式公開)やM&Aなどを一つの目標として、世界を変える会社となれるよう伴走し成長を支えます。
私自身の起業のきっかけは、ビジネスとして起業家を支援する会社がない、と感じたことでした。
医療機器メーカーで3年間営業をして、2000年頃インターネットが普及し始めたとき、「過去の経歴に関係なく自分自身の力を試して世の中を変えることができるのがインターネットだ」と感じました。
2000年にアクシブドットコムに入社しITベンチャー企業のビジネスを経験するなかで「インターネットで世界を変えようぜ!」という仲間と出会いました。そのうち「起業家を支援する環境がない」と感じたのです。

 

起業家にはさまざまな悩みがあります。資金調達やオフィス、チームづくり、住むところ、弁護士・税理士についてどこに相談したらいいかなど、多岐にわたるのです。
そこで「ビジネスとして起業家を支援する会社をつくろう」と創業したのが、サムライインキュベートです。

 

「サムライハウス」で起業家たちと暮らし、苦楽も成長も共に。

 

2008年の創業時は楽しくやっていたので苦労を感じたことはあまりなく…(笑)。
2009年になって練馬に一軒家を借り、シェアハウス「サムライハウス」として、起業家数人と一緒に暮らしました。その当時はまだシェアハウスというのがほとんどなかったのですが、物件を探すのも一苦労。でも実際にやってみると楽しくて仕方がなく、社会人になって遅まきながら「青春」という感じでした(笑)。
その起業家たちは、翻訳のクラウドソーシングサービスや、スマホ向け広告配信など、その当時では最新のIT関連事業を立ち上げていました。
この頃はリーマンショック後で、そのようなベンチャー企業にほぼ誰も投資していない状況です。

 

現在は十数億円の資金調達も一般的になっていますが、当時は数百万でも大変というなか、サムライインキュベートは500万ほど投資していました。

 

この時代に起業しようという起業家は、超骨太の方が多く、だからこそ成功する力がある方に投資できたのだと思います。起業家たちにとても喜んでいただいて、苦楽をともにして兄弟のような関係になり、家族が増えていく感覚でした。
その起業家たちが成功されて、サムライインキュベートが株を売却することによって私たちも収益を上げることができました。
その後、天王洲アイルに移転し、より大きな居を構え、より多くの起業家の支援ができるようになり、それに伴いファンドも大きくなっていきました。
そして2019年にはさらにファンドサイズを拡大し、港区六本木一丁目のオフィスに移転しました。
投資先が海外にも増え、現在約230社に投資しています。

 

共感されるサービスで社会課題を解決していきたい。

 

投資を決定する際には、その事業が5年後に流行るかを見極めています。人の悩みを解決し、共感されるサービスをつくることが得意ですね。社会課題を一つひとつ解決していくのが、サムライインキュベートの真骨頂であり、起業家と一緒につくっている世界観です。
例えば、女性向けファッションアイテム月額制レンタルサービスの「airCloset(エアークローゼット)」は、アイデア段階からご一緒させていただき、2022年7月に東京証券取引所からグロース市場上場を承認されました。
女性の社会進出が増え、忙しい日々の中で買い物へ行く時間を取りづらいという状況に対してプロのスタイリストが選んだ「洋服の月額制レンタルサービス」というアイデアです。このサービスはリリース前から約3万人もの事前登録が集まりました。

 

誰も解決できていない顕在化している課題に「えいや!」と切り込んでいったのが、サムライインキュベートです。
支援を受けることが難しい創業時にサムライインキュベートがご支援することによって、起業家に喜んでいただけて、さらに支援したサービスを利用することによって背中を押された方、救われる方が増えることは、何より嬉しいことです。

 

誰も支援できないようなことを支援する。

 

今後の展望としては、より社会問題に近いところにアプローチしたいと考えています。いじめや不登校の問題などもそうですが、痛みが大きい問題を解決していくことは、必ずビジネスになると思います。
誰も支援できないようなことを支援することにより、大きなインパクトが生まれる、それがサムライインキュベートの強みです。そしてその確率を高めていくべく、環境変化に応じてレベルを上げていきます。
支援を実現するための体制として、一つ目は事業創造のプロセスを体系的に整理した独自のフレームワークがあります。これまでの約230社を支援した経験を活かし、アイデアの立ち上げ方、プロダクトがマーケットにフィットするかどうかなど、フレームワークを活用して支援します。
 

 

二つ目は、現在メンバーのスキルをアップデートしています。いまだ日本からトヨタのようなグローバルで成功するユニコーン(評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業)が出ていません。世界を席巻できるスタートアップへと支援できるようバージョンアップしているところです。

 

そして三つ目は、投資先候補となる起業家を探すためのネットワークです。日本全国22都道府県に投資先があり、各地の地銀とのネットワークも増えているので、ダイヤモンドの原石のような起業家のソーシングも可能です。
また、イスラエルやアフリカの起業家を支援していることも、ほかのベンチャーキャピタルにはない強みといえますね。

 

 

日本の強さをもって、世界の平和に貢献してきたい。

 

イスラエルとアフリカへは、基本的には飛び込みです(笑)。
なぜイスラエルかといいますと、イスラエルはユダヤ人の方が75%ほどいらっしゃいますが、グローバルで成功している企業、世界のビジネスを席巻している金融系企業の創業者はほぼユダヤ人です。
非常に能力が高いユダヤ人のナレッジを日本の大企業やスタートアップに活用できれば、世界に通用する企業となれる可能性があると考えました。その接点をつくりたくて、イスラエルへ行ったのがきっかけです。

 

アフリカは、イスラエルのメンバーと、ルワンダをICT立国にする支援活動している方とのつながりがあったことがきっかけです。そこでアフリカに行き、人口が非常に増えていたり、国民がスマートフォンを持ち始めていたこと、住所や銀行口座を持っていないからこそ生まれる斬新なサービスなど、アフリカの可能性を感じました。

 

日本は戦後、マイナスから立ち上がってきました。その強さを再び世界にアピールすべきではないかと思っています。
約30年前、時価総額ランキングトップ50の7割を日本企業が占めていました。日本は戦争しないと決めて経済大国となった、世界から目指すべき国だったのです。
現在の時価総額ランキングトップ10は、世界のベンチャーキャピタルが支援している会社です。サムライインキュベートも、もっと資金を預けていただけるような、信頼していただけるベンチャーキャピタルになりたい、というのが大きな目標です。
そして、支援した会社が世界トップレベルの会社になり「戦争しない日本のビジネスがすごい」と思ってもらえたら、戦争をしない、という動きにつながっていくと思うんです。つまり、世界が平和になることにつながると考えています。それが、私が最終的に成し遂げていきたいことです。

 

 

起業家に大切な「志勇礼誠」のマインドとビジョン

 

投資を決める際には、「人」をかなり重視していて「志勇礼誠」というマインドを大切にしています。
「志」は、将来こういう風にしたい、こんな世界をつくりたい、ということを具体的に粒度高くイメージをもち、話せるということ。
「勇気」は、人が嫌がるようなこと、誰もやっていないけれど世の中のためになることを、手を挙げて率先して取り組めるかどうかですね。
また、「礼」は、立場や階級関係なく、そして目の前にいる人はもちろんですが、過去の人に対してもしっかり恩を感じて礼を尽くし、未来につないでいけることです。
そして「誠」は、小さな約束、ふとした言葉であっても約束を守りきれるか、最後まで成し遂げられるかどうか。
この4つのマインドをしっかりもっているかが重要であると考えています。4つのバランスが整っていないと、大きなことを成し遂げるのは難しいと思います。

 

そしてもうひとつ大切なのは、どんな課題をもっている人をどんな風に解決したいか、明確に伝えることができる、ということです。
誰もがわかりやすいアイデアは、サービスをリリースする前から共感を得られます。
もちろん、ビジネスのポイントが合っていたとしてもやりきれない場合もあります。そこは「人」なんです。起業で大変なのはストレスが相当かかること。それをどう乗り越えられるかが重要です。自制心があってやりきれる力があるか、そこが1番ですね。そういう方は事業をピボットしながらでも、しっかり検証しながら乗り越えていくことができます。

 

成長分野に投資して、日本を強くしていく。

 

今注目している分野は、3つあります。
 
一つ目は、エンターテイメントや教育分野です。コロナ禍により通勤時間が減り、自分の時間が増えたことによって、エンターテイメントを楽しんだり、副業を検討してもう一度勉強し直したりする方が増えています。
二つ目は、日本が誇る、建設、製造、物流です。少子高齢化での人手不足、原価高騰などがあるなか、DX化がまだまだ進んでない分野があります。
そして、三つ目は医療分野です。医療費をより削減できるようなDX化が求められています。
サムライインキュベートが出資している、未病段階から認知症リスクを分析するスタートアップがあります。全脳の画像とビッグデータを活用して、脳疾患の発症リスクを分析・可視化し、将来の脳梗塞や認知症のリスクを評価して、受診者に早いうちから生活習慣を変えてもらうきっかけを与えます。予防を促して発症を減らすことで、結果、医療費の削減にもつながっていきます。
日本においてこのような分野に投資していくと、日本が強くなっていく、と考えています。

 

起業を目指す方へのメッセージ

 

起業することのメリットは、自ら世の中を変えることができ、多くの方に喜んでいただけるということです。そして、1番はストレス耐性がつくことです。
ストレス耐性がつくと、周囲の方にもストレス耐性がついてくるんです。周りの方、例えばご自身の子どもへの影響力もあるので、未来の人たちが強くなります。
起業を悩んでいる方に「あなたは失敗してもいい、お子さんは成功しますよ」という話をすることもありますね。私にも娘が二人いるのですが、娘たちが強くなるはずとがんばっています(笑)。

 

幸せと苦労はバランスが同じだと感じています。起業家はたくさん苦労もしますが、その分、大きな幸せがあります。
私は、より多くの人、数十億人に喜んでもらいたい、という想いで支援しています。多くの方を笑顔にして世界を変え、自分の存在意義や意味を残していきたい、という想いがある方はぜひ起業に挑戦していただきたいです。

 

 

記事投稿日:2022年9月30日