株式会社Polyuse

株式会社Polyuse
業界未経験から
日本初3Dプリンター建設の
パイオニアへ

大岡 航さん

株式会社Polyuse
代表取締役 大岡 航さん

株式会社Polyuse
代表取締役
大岡 航さん / Wataru Ooka

1994年生まれ、高知県出身。同志社大学政策学部卒。在学中にWEB/システム開発事業を中心としたIT会社を創業。現在まで、ベンチャー企業の創業4社に参画。同時に個人でも複数の会社で経営参画し、多くの新規及び既存事業の立ち上げ・成長に従事。経営全般と広報及びマーケティング戦略の統括を担当

X(旧Twitter):Polyuse | 建設用3Dプリンタ

 

 

業界の深刻な課題を解決する
新しい技術を建設業に

 

―貴社のビジネスや事業の取り組みを教えてください。

 

私たちは、建設用の3Dプリンターを開発し、建築・土木関連の事業に取り組むベンチャー企業です。建設業といえば、一般的に住宅などを思い浮かべるかもしれませんが、私たちは土木を含む建設全般に関わっています。

土木には、道路や橋、トンネルなど、インフラを支える重要な工程が含まれ、これらは建造物を建てるための基盤になります。私たちが3Dプリンターを使って住宅だけでなく、道路、橋、土砂崩れを防ぐ擁壁など、さまざまな建設物を製造するようになったのは、建設業界の深刻な人手不足が背景にあります。職人の数が減ってきているからこそ、建設用3Dプリンターを活用し、人とテクノロジーが共存することで新しいデジタル建設の未来を築いていきたいと考えています。

土木業界に力を入れる理由に建設用3Dプリンターには、迅速かつ合理的な建設プロセスを構築できる特徴があります。例えば、街を築くには道路や河川、ダムといった土木インフラの整備工事をおこなうことで、人々が安全に生活していくことが出来ます。

 

また復興の観点から見ると、被災地にとって早急なインフラ整備は不可欠です。道路がないと車の通行が困難ですし、公共交通機関の利用もできません。病院や学校などの生活に重要な復興も後手に回ってしまうことでしょう。有事の際や災害復旧工事でこそ、みんなで技術を活かしていきたいです。日本は震災の多い国ですし、基盤となる土木の役割がとても重要だと考えます。

 

 

 

 

 

地元高知で巡り合った
人生を通してやりたいこと

 

-大岡さんは建設業界出身ではないとお伺いしました。

どのような経緯で3Dプリンターを使ったビジネスをするようになったのですか?

 

私はもともと大学在学中に情報技術を活用したアプリケーションやWEBサイトなどを構築するシステム開発を軸とする会社を創業し、これまで複数の事業を興してきました。Polyuseは今日までで4社目の起業になります。

私が多く関わってきたIT領域は、起業家たちが高い時価総額で資金調達し、その後上場、成長し将来的に日本経済を牽引していくのだろうというのを目の当たりにしてきました。

 

当時、私たちの会社も所謂、中小企業規模ではありますが、同業種よりは高い売上や粗利率ではありました。ただ、例えば時価総額が1000億円を超えられるようなポテンシャルは、残念ながらあまり感じられませんでした。そこを目指すには、マーケットをリードできるようなOnly Oneの技術やビジネスモデル、体制等々に秀でた企業を作るべきだと感じていました。そんなことを考えていた25歳の時、地元に帰省した際に転機が訪れました。

 

私は高知県出身で、地元の友人たちの多くが漁業や農業、林業などの第一産業に携わっていました。高知県は森林面積が約84%あり、林業が盛んな地域です。ただ、その業界はデジタルやテクノロジーの分野がまだまだ浸透しておらずアナログ管理に留まっていました。

私は林業という分野に大きな可能性を感じました。

そこで、手始めに林業における資源管理の効率化を図るために、点群データをもとにマッピングや解析を体験できるプロトタイプツールを開発しました。林業の分野にデジタルを取り入れた活動は、手ごたえも感じられ、小さくとも着実に評価されていたと思います。

そんな中で林業業界を通して徐々に土木や建設業の方々とお話をする機会も増えていきました。日本の建設業の市場規模は、当時で公共や民間を合わせると65兆円ほどあり、世界的に見てもトップクラスのビッグマーケットです。しかし、その反面で日本企業の多くは、「人手不足」や「インフラ老朽化」という厳しい課題に直面しています。さらに、近年の円安やウッドショック等によって、これまで、例えば2000万円で建てられた住宅が地域によっては4000万円を超えてしまう状況もあると知りました。

 

つまり、これまでの常識が通用しない時代に突入していると考えた方が現実的でした。現在の建設業の待った無しのこれらの大きな課題を解決するために着目したのが、3Dプリンター技術です。

実際、3Dプリンターの基礎技術の最初は、日本人が開発し、後に海外でも研究や投資が進み発展していきました。この技術を活用すれば、最適な人材体制かつ最小限のコストで施工をおこなえるのではないかと考えました。何よりも既存にとらわれず、Only Oneの世界に進むことができると確信しました。

 

 

 

 

Only Oneの世界にたどり着く
若い感性と専門知識

 

―大岡さんがビジネスをする上で大切にされていることは何ですか?

また競合の存在は?

 

当社のメンバーのほとんどが理系の出身者で、それぞれが専門知識を持っています。例えば、リニアモーターカーでも活用される超伝導技術の研究開発にこれまで携わっていたり、人工知能や機械学習に精通するエンジニアが在籍したりと領域は多岐に渡ります。

私たちが提供しているのは、建設用3Dプリンターを使っての業界特有のより本質的な課題解決です。故に建設用3Dプリンターによる印刷技術に限定した研究開発に留めずに印刷したコンクリート構造物自体の構造や力学特性のコンサルティング、高い汎用性から高付加価値な材料工学、各種方面で必要なセンシング技術やシミュレーション解析など、過去の蓄積したデータと多岐にわたる技術を組み合わせた上でお客様との協議に臨んでいきます。

 

多くの方は、よく3Dプリンター自体に興味関心を抱きますが、例えば3Dプリンター用のマテリアルにも多くの専門的な知識や研究開発が必要とされます。そして、総合的にシステムを構築していく上では必要不可欠な要素です。施工現場やハードウェア環境に合わせて、マテリアルの研究開発や質を高めていく過程には、膨大なコストと時間がかかります。

最近では、AIを活用した研究開発も増えており、効率が格段に向上しています。新しい技術を持つ、さまざまなベンチャー企業が誕生し、新しい表現が可能になってきています。そのような時代背景もあり、目に見えて建設業の変革が始まっています。産業を新しくつくることや発展させるためには、20代30代の若い人たちのアイデアはとても重要だと個人的には思っています。

GoogleやAmazon、Apple、Facebook、Microsoftなど、世界を代表する企業はすべて若い世代で創業されています。この世代の価値観は決して軽視できません。若い感性と行動力を持って、未知の領域に挑戦していくことを私たちも大切にしています。

 

そして、競合についてですが、建設用3Dプリンターは複合的な技術であるため、結果的に国内では競合が少ないと言えます。まだまだ未開拓の分野ですし、ゼロからスタートアップが参入するには、壁が一定数高いと思います。

弊社も同様の条件でスタートしましたが、今では複数の大手企業様からも資本関係のご相談もいただきます。ただ現時点では意思決定するには、もう少し先になるかと思います。私たちの目標は、あくまで建設業界の課題解決を通して、日本の経済に重要な産業を生み出せるスタートアップに最短でなることです。

お声がけは光栄なことですが、目の前の損得を意識してしまうが故の意思決定に焦らず、自分たちが目指すべきところに向かって歩みを止めるつもりはありません。

 

 

 

 

これまでの創業地に比べて
スタートアップの理解が高い港区

 

―港区を拠点にするメリットをお聞かせください。

 

先輩や友人たちも含め、港区で創業した起業家はたくさんいます。創業していなくても、生活の拠点として港区を選ぶ人も多く、スタートアップ創業者にとってもコミュニュケーションが盛んな街だと感じています。

これまで地方でも東京でも創業させていただきましたが、港区はスタートアップ支援が充実している一つのコミュニティと実感します。その理由に港区にある行政や金融機関はスタートアップとのコミュニケーションに慣れている方も少なくなく、しっかりとフォローしていただける印象です。ビジネスモデル検証や資金調達、将来的なネットワーク等々について適切かつ親身にアドバイスしてくれる方が窓口にいるのはとても心強いですね。

また最近では上記も参画するアクセラレーターも増えている印象ですので、今後もますます活性化していきそうです。

 

港区に拠点を置くことは投資家とのコミュニティの物理的距離も近くなり、資金調達の壁打ちも解像度が高く迅速にできるのは優位に働くと思います。創業地選びにアクセスや環境の良さは当然大切ですが、投資家も集まるエリアという観点で考えても、港区のメリットは計り知れません。

 

 

 

 

自分の価値を高めれば
業界を変えるくらいの力になる

 

 

―貴社のこれからのビジョンと、スタートアップを目指す人に向けてメッセージをください。

 

公共のインフラ工事で建設用3Dプリンターの使用を誰でも可能にする仕組み作りを、より積極化していきたいと考えています。

例えば、建築には建築基準法という法律があり、建設用3Dプリンティングとしての構造や建築材料としての記載がなく、多くの協議事項が発生し気軽に使用できるとはまだ言えません。法律を整備するには、国としてのマクロ視点でシステムをアップデートしていく必要があり、政府や行政との連携が不可欠です。

 

その上でスタートアップ側が力強い実行力を持ち、港区のような心強いサポートを受けながら、産官学が連携していくことで世界に通用するスタートアップが港区から生まれるエコシステムが構築されてくると信じています。

 

私たちも最近は、国土交通省や大学、学会等の業界団体との話し合いが増えてきており、少しずつ目標の実現に向かって進んでいます。直近では、国内初の常設型の3Dプリンターサウナもオープンすることができまして、多くの方に新しい体験をしていただくことが可能になりました。

(建設用3Dプリンタで作られたサウナ施設:ナミテラス芸西)

 

私たちのようなスタートアップができることの一つとして、新しい技術の導入や他の産業の専門家を積極的に対話に巻き込むことで、これまでにない発展につなげていきます。

ここから始まるのが新しい動きであり、変革の兆しだと考えています。業界を変えられるくらいのアプローチを示せるのであれば、それは素晴らしいことだと思いますし、個人的には同年代はもちろん、自分より若い世代が積極的にレガシーな産業に参加する機会が増えていけば嬉しいです。

皆さまの技術やサービスが建設業界だけでなく、新しい時代の礎となることを期待しています。私たちも挑戦を続けます。

 

 

 

 

記事投稿日:2024年3月26日