株式会社プラントベースコンサルティングジャパン
株式会社プラントベース
コンサルティングジャパン
ヴィーガンも生きやすい社会を目指し
学生企業
株式会社プラントベースコンサルティングジャパン
代表取締役ブリンクマン 恵美さん
代表取締役
ブリンクマン 恵美さん/Emi Brinkman
■経歴
上智大学生で、全国初のヴィーガンサークルを創設し、90人以上のメンバーと共に活動。大使や議員のもとでインターン経験を積み、世界26カ国でフィールドワークに従事。上智大学主催のコンテストでヴィーガン活動を発信し、準グランプリとSDGs賞を受賞。日本でプラントベース文化の普及を目指し、当社を設立し、現在も尽力している。
ヴィーガンメニューの開発や
イベント企画、食事指導
―「プラントベースコンサルティングジャパン」様は、どのような事業を展開しているのですか。
私たちはプラントベースやヴィーガンに特化したメニュー開発やイベント企画、料理のケータリング、食事指導を中心に事業を展開しています。 プラントベースの食生活とは、主に植物由来の食品に焦点を当てた食生活のことです。動物由来の食品の摂取を極力避け、野菜、果物、豆類といった植物から得られる食品を主に摂取します。環境への負荷を減らし、健康面でもよい影響があるとして近年、注目されています。 そしてヴィーガン(完全菜食主義者)とは、肉、魚、卵、乳製品などすべての動物由来の製品を食事から除くライフスタイルをとる人のことです。食事以外の日常生活でも、毛皮など動物性製品を使わないようにしています。
ヴィーガンやプラントベースへの関心は日本でも徐々に高まりつつあり、ホテルや飲食店、旅館などから「ヴィーガン対応のメニューを導入したい」というご要望をいただくことも増えてきました。ただ、「まずヴィーガンが何か分からない」「どうやったらおいしいものを作れるか分からない」という場合も多いです。
例えばフレンチの有名シェフも、メインの具材だけでなくソースも含め、エビなどの魚介や肉を使う前提で料理をしてきているので、今まで培ってきた武器を使わずヴィーガン向けの料理を作るように言われても、おいしいものはあまり作れません。そこで、当社には特別顧問として、フランスのミシュラン三つ星レストランでの勤務経験もある、プラントベース料理の専門家のシェフを迎えています。おいしいものを提供したいけれども、作り方が分からないという方に向け、一緒にメニューを開発するコンサルティングをしています。
―手ごたえはいかがでしょうか。
ヴィーガンに関するビジネスのニーズは高まってきていると感じます。私がヴィーガンになったのは2020年5月でしたが、そのころは「ヴィーガンって何?ベジタリアンとは違うの?」と困惑した様子で言われることも多くありました。
今はスーパーに行ってもヴィーガンの麺やキット、プラントベースのソースなども見かけるようになり、消費者の意識が変わってきています。
―ブリンクマンさんがヴィーガンになったきっかけを教えてください。
高校生だった2020年5月、ヴィーガンだった英語の先生が勧めてくださったドキュメンタリーを見て、畜産が環境に与える影響が大きいという内容にショックを受け、翌日からヴィーガンになりました。当初は両親にも体への影響を心配されましたが、体調がよくなったり、朝もすっきりと起きられるようになったりしたのを感じました。ヴィーガンの食生活が自分の体に合っているのではと思い、ヴィーガンについて勉強するようになりました。
―食生活はどのように変わりましたか。
昔は肉や魚、カップラーメンなどの加工食品を食べることも多かったですが、今は豆で作られたパスタや玄米、オーガニック野菜を使ったミネストローネなど、自然の恵みを感じられる食材を選ぶようになりました。また、フルーツも日常的に取り入れています。
ヴィーガンの食生活を始めて1年ぐらい経ったら、お肉や乳製品などの動物性食品を食べたいと思うこともなくなりました。
ヴィーガンサークルの立ち上げから、
学生起業の道へ
―大学に入って、最初にヴィーガンのサークルを立ち上げたのですね。
1年生のときに陸上部に入ったのですが、そのときは新歓コンパでもいろいろな飲食店に行きますし、周りを気にして自分がヴィーガンだということを言えませんでした。おそらく、他にもヴィーガンであることを言えない人がたくさんいるだろうと思い、2年生の5月にヴィーガンのコミュニティをつくろうと、サークルを設立しました。とはいえ最初は、私の友達に誰もヴィーガンがいなかったので、ヴィーガンでない周りの友達も誘って、9人ぐらいで活動を始めました。
ですが、私がSNSに活動の様子を載せているうちに、ヴィーガンの人がサークルを知ってくれて、友達の友達を中心に1ヶ月ぐらいで20人ほどに輪が広がりました。1年足らずのうちに、90人を集めて交流イベントを開催できるようにもなりました。
―サークルの立ち上げにとどまらず、起業したいと思ったのはなぜですか。
サークル活動をしていくうちに、ほかの大学の学生も含め、コミュニティがどんどん大きくなっていきました。その活動は楽しかったのですが、2~3年経つと慣れてきて、もっとチャレンジングなことをしてみたいと思いました。
サークルを作ったときの目的は、ヴィーガンのコミュニティづくりでしたが、それと同時に「ヴィーガンという選択肢をとりやすい社会にしたい」という根本的な思いもあったんです。コミュニティづくりはある程度できたので、今度はヴィーガンメニューがある飲食店を増やすためメニュー開発などに取り組み、ヴィーガンという生き方を選びやすく、オープンにしやすい社会を目指していきたいと思いました。
―起業でなくても、NPO法人などの選択肢もあったかと思います。
その中で起業という形をとったのはなぜですか。
たしかに自分の目指したい社会をつくるためには、ビジネス、行政、非営利での活動など、様々なアプローチがあると思います。私はヴィーガンに関する活動を進める中で、議員インターンも経験しましたが、行政の担当者もあまりヴィーガンについて理解していない、政策を進めるのには時間がかかるといった限界を感じ、結局はビジネスとして進めていくのが早いと思いました。
また、将来的には自分たちで飲食店も経営し、ビジネスとして展開していきたいので、株式会社を設立することにしました。
―起業して大変だったことはありますか。
もともと、財務や税金のことなどを何も知らずに起業しました。「会社をつくってから考えよう」と思って事業を始めましたが、そうしたら事務所にたくさん、年金や社会保険などについてのメールや郵便物が届くようになったんです。そのたびに年金事務所や税務署などに行って、自分の状況を説明し、窓口の方に教えていただき…ということを繰り返して、1つ1つクリアしていきました。
事業展開でも大変さを実感することはあります。海外と比べ日本国内では「プラントベース」「ヴィーガン」という言葉は浸透していません。その中で日本人からオファーをいただくことの難しさを感じています。言葉自体があまり知られておらず、需要がまだ伸びている途中という段階で案件をキャッチするのは難しいですね。私たちの会社としても、探り探りでも少しずつやっていかないと、言葉が広がらないと思っています。コツコツとSNSなどで発信を続けています。
世界各国を旅し、
多様な食文化を学んだ経験をビジネスに生かす
―そうした中で、起業してやりがいを感じた瞬間は、どんなときでしたか。
起業直後にいただいた案件が印象に残っています。表参道で開催された、世界的に有名なアーティスト、ビリー・アイリッシュさんの新アルバム発売記念イベントで、ヴィーガン料理のケータリングを担当させていただきました。ビリーはヴィーガンとしても知られ、私たちはヴィーガン対応、オーガニック、無添加、グルテンフリーといった要望に対応した料理を提供しました。
イベント会社からは「ビリーの要望を満たせる料理を日本でなかなか見つけられなかったので、ようやく依頼できてよかった」、ビリーからも「おいしいし、こんな綺麗なケータリングは見たことがない」と言っていただきました。一歩一歩ではありますが、困っている人たちに私たちのサービスを提供して、感謝されたことがうれしく、やりがいを感じました。
―起業したからこその喜びですね。
もしも起業していなかったら、大物アーティストのイベントに携わることはなかったでしょうし、お互いの需要と供給がマッチしてよかったと思っています。
―起業してすぐに大きなイベントに関われたのですね。どのように人脈を拡大してきたのですか。
自分たちのサークルでヴィーガン料理の店に行って、お店の人にサークルの存在を知ってもらったり、イベントに来てくれた人やシェフを通じて新たに知り合いができたりしていくうちに、ヴィーガン界隈のコネクションが広がっていきました。
―経営者として日々どんなことを心がけ、事業をしていますか。
サークルを運営していたときもそうでしたが、コミュニケーションは大事だと思います。最初のうちはどうやって人を動かせばいいのかよく分からず、たくさんLINEもしていましたが、やっていくうちにコミュニケーションをとらないと、誤解や行き違いも生まれますから、お願いごとをするときにはきちんとコミュニケーションをとる、ということは心掛けています。それは会社内に限らず、会社外の方とのやりとりでも大事だと思っています。
―1年間休学し、世界各国で多様な食文化も学んでこられたそうですね。
バックパックでベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、シンガポール、インドを巡りました。その後、アメリカやイギリス、ドイツ、ルクセンブルク、ベルギー、南アフリカにも行きました。
インドでは人口の4割ぐらいがベジタリアンです。ヴィーガンというコンセプトではないですが、ベジタリアン向けのメニューや食材がどこにでもあります。 イギリスやドイツでも食の多様性は進んでいて、ヴィーガンの人口もとても多いです。イギリスだと人口の1割ぐらいがヴィーガンで、ドイツだと4割ぐらいが、意識的にお肉の摂取量を減らしているフレキシタリアンかヴィーガンかベジタリアンです。ですから、街を歩いていても当たり前にヴィーガンやベジタリアン向けの飲食店があります。マクドナルドにもヴィーガン向けのハンバーガーがありました。
日本でも、飲食店にヴィーガン料理が当たり前にある社会をつくり、ヴィーガンというライフスタイルを選択しやすい世の中にしていきたいと感じました。
飲食店経営や商品開発、料理教室など
幅広く事業を展開したい
―今後の事業の展望を教えてください。
飲食店経営には挑戦したいですね。日本で最近増えている外国人観光客の約1割はベジタリアンかヴィーガンとも言われています。そうした外国人観光客の方が行ける飲食店は限られているので、ヴィーガンの外国人も入れる飲食店を開きたいと思っています。
そのほか、個人消費者向けのケータリングにも力を入れていきたいですし、将来的には商品開発や料理教室の事業もしたいです。ヴィーガンのレシピを学べるコンテンツ配信もいいですよね。幅広くヴィーガンに関する事業を展開していきたいです。
―学生のうちに起業して良かったと思うことはありますか。
私はもともと起業するつもりは全くなく、1年前ぐらいから就活を始めました。ただ、自分が就職したいと思える会社がなく、本心では、自分を抑えたくないと思っていたんですよね。そこで、自分で就職したい場所をつくるしかないと思って、起業しました。働きたいと思える場所がないという学生は、早いうちに起業に挑戦するのもいいと思います。
―港区立産業振興センターのイベントにも積極的に行かれているそうですね。
アフリカについてのイベントでは、食関連の事業をしている方と知り合いました。私もいつか、自然豊かで日本やヨーロッパとは違う雰囲気があるアフリカに進出したいと思っていたので、ご縁がありがたかったですし、それ以外にもさまざまな年齢、業種の方と知り合えて楽しいです。
―これから起業しようと思っている方へのメッセージをお願いします。
「粘り強く、やりたいことはやり抜いてください」ということでしょうか。私も最初は、何からどう始めればいいかわかりませんでした。ホームページも1から勉強して作りましたが 、やってみたらできました。
そんな風に、起業してみたらできた、ということはたくさんあります。ビリー・アイリッシュさんのイベントでのケータリングも、起業したからこそ依頼していただき、実現したことです。実際にやってみないと話も始まらないと思っています。「とりあえず足を踏み入れてみて、やりたいことをやってみたらどうですか?」と皆さんにお伝えしたいです。
記事投稿日:2025年2月3日