株式会社なうデータ研究所

株式会社なうデータ研究所
国産ルールエンジンで
AIの発展を加速させる
ナレッジ・サイエンティスト集団

大野 国弘さん

株式会社なうデータ研究所
取締役・上席エバンジェリスト大野 国弘さん

株式会社なうデータ研究所
取締役・上席エバンジェリスト
大野 国弘さん/Kunihiro Ono
1997年、九州工業大学大学院在学中に株式会社なうデータ研究所に参画。卒業後は研究員として入社。以降、業務知識にフォーカスした業務プロセス改革の専門家として、さまざまなルールエンジン導入のプロジェクトを実現。業務知識のデジタル化・DXの促進活動をおこなう。また、国産ルールエンジンの普及に向けて広報活動などをおこなっている。

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AIの信頼性を高める
ルールエンジンという技術

 

―貴社のビジネスや事業の取り組みを教えてください。

 

私たちは、人が持つ判断基準をシステムに登録し、それをもとに自動的に判断をおこなう「ルールエンジン」の開発、ソフトウェア販売や業務改善提案をしています。ルールエンジンとは、AI技術のひとつで、例えば、宅配便を利用する際、荷物の大きさや送り先によって料金が異なると思いますが、その条件をシステムに登録し、決められた基準によって判断をおこなう仕組みをつくります。つまり、「サイズ100cm以内10kgまでの荷物を県内に配送すると送料は1000円になる」など、瞬時に答えを導くことができます。

 

近年AIといえば、「機械学習」が取り上げられ、一般的にも周知されてきました。機械学習とは、コンピューターが大量のデータを学習して、その中から規則性を導き出して判断をおこなうプロセスのことを言います。例えば、いくつか動物の写真があるとします。そこから猫を識別する場合、学習した規則性からおよそ「目と鼻があり、髭が10本くらいある10cmサイズの小動物」と検索するとします。そして、蓄積された膨大なデータの中から適した写真を自動で探し出します。しかし、「目と鼻があり、髭が10本くらいある10cmサイズの小動物」は、猫であるとは限りません。場合によっては「キツネ」と判断する場合もあります。また、AIにはなぜ猫であると判断したのかを説明することはできません。

これは現在のAIの限界が垣間見える例であり、正確な判断に導く技術が未発達であることを示しています。ルールエンジンと機械学習は、どちらも判断を自動化するツールですが、答えの確実性は人が定めた条件に基づいて判断されるという点でルールエンジンが適しています。だからこそ、より判断基準を正確にする必要のある場合にはルールエンジンが採用されます。

私たちは、誤った判断が決して許されない分野において、精度の高いルールエンジンを取り入れたシステムやソフトウェアを提供しています。そして、機械学習とルールエンジンの技術を組み合わせることで生まれる「ハイブリットAI」をつくり出し、今までにない支援を目指しています。

 

 

 

 

ルールエンジンに取り組む
大学初のベンチャー事業

 

―AIやルールエンジンを提供するようになったビジネスの経緯を教えてください。

 

ルールエンジンは、50年以上前から存在する技術で、AIの研究の先駆けでした。最初は「エキスパートシステム」と呼ばれ、専門家の意思決定を機械的に自動化することを目指して開発されました。これらのシステムは、主に医療や製造業など特定の分野で専門家の知識を補完する役割がありました。過去には白内障の診断をするシステムも開発され注目を集めたことがあります。

「なうデータ研究所」は、そのような専門家の知識を人とコンピューターが共通して理解・処理するための研究をもとに、大学発のベンチャー企業として1996年に創業。国産ルールエンジンの開発・発展と、普及を目的に会社が設立されました。私はその当時、大学院生でしたが、偶然にも会社の立ち上げ時にアルバイトとして参加しました。

 

設立当初の事業の柱は健康診断をおこなうソフトウェアでした。その内容は、全国から健康診断のデータを集積し、健診者さんが健康であるかを判定し、判定結果をわかり易く説明する文章を自動生成するサービスです。実際に提供したのは福岡の企業でしたが、評判を呼びました。その後、建築や機械設計者のための設計支援ツールの販売をはじめ、大規模な組織の運用システムに組み込むことができる今のルールエンジンへと進化しました。

この過程で東京の企業からも発注をいただけるようになりました。都心には、DXの導入を進める企業が多く、ITの意思決定がおこなわれます。当時、代表を務めていた者が東京に在住していたため、お客様との接点を活かすことができました。大学の先生方は研究的視点でソフトウェア技術を提供し、私たちはビジネス的な視点で協力しながらサービスを提供していました。今では福岡に本社を置きながら、顧客企業へのサポートは東京のオフィスがおこなっています。

 

 

 

 

IT企業が集まる港区には
AIに興味を持つ方が多い

 

―東京を中心に活動されていて、その中で港区を拠点に選んだ理由をお聞かせください。

 

やはり交通利便性の高さですね。当社の東京オフィスが港区にあるのは、顧客との商談に便利だからです。関わりの深いクライアントが都内に集中しており、移動の便を考慮して三田にオフィスを構えました。ここは新幹線の発着駅である品川駅や羽田空港に近く、本社の福岡との往来もスムーズです。私自身も東京に住んで8年になりますが、この地域の住環境はとても気に入っています。

 

また、港区には多くのIT関連企業が集まり、AIに興味を持つ方々もたくさんいます。そのため、港区立産業振興センターを会場にセミナーを開催しています。機材関係も豊富なので、最近ではここで動画の撮影から編集までして、YouTubeにアップしています。ルールエンジンの解説やサービスの説明動画を配信していますので、よろしければ当社のチャンネルを是非ご覧ください!

 

 

 

 

用途に合わせてカスタマイズする
使い勝手の良い国産製品

 

―貴社のルールエンジンの特長や他社との違いを教えてください。

 

例えば「書類チェック」とWEBで検索すると、当社のサービスが上位検索に上がります。AIの普及に伴い、最近ではチェック機能の自動化について、ダイレクトにお問い合わせいただく機会が増えてきました。当社のルールエンジンの特長は、お客様の課題に合わせて自由にカスタマイズできることです。

ルールエンジンを提供するのは外資系企業が多いのですが、従来のソフトウェアは条件(ルール)の書き方が固定化されています。もし、お客様の用途に合わせてカスタマイズすると大変なコストが必要になります。私たちは言わば「国産ルールエンジン」です。サービスを提供する前にお客様が抱えている課題をしっかりと聞き出して、お客様にとって最適なソフトウェアを提供します。その上でルールエンジンとしてのベースソフトウェアと、企業独自のビジネスルールを整備したルールベースを二段重ねにして構築していきます。

 

また、国内での採用実績が多いため、業界を横断してサービスの改良を図ることができます。例えば、医療現場で活用したルールエンジンをベースに改良し、大規模な組織の運用システムに組み込むなど、過去の事例でありました。そして、その後は通信会社などにも展開されていきました。ルールエンジンは、専門家でない限り理解するのが難しく、概要を説明しても分かりにくいことがあります。そこで過去のサービスを紹介し、お客様のビジネスに合わせてカスタマイズしていくことを当社の強みとして紹介しています。シンプルですが、この伝え方が最も効果的で分かりやすいと言われます。私たちは、ルールエンジンをよりシンプルにし、あらゆる業界で活躍できる汎用性の高い商品の開発をおこなっています。これからAI全盛期の時代がやってくるでしょう。前述しましたが、機械学習とルールエンジンは別の商品・サービスではなく、同類です。組み合わせることでより良いAIソフトウェアの開発につながっていきます。

 

 

 

 

ルールエンジンを次世代へ
今よりも身近な存在を目指して

 

―AIの発展は誰もが注目しています。そこにルールエンジンの重要性が伝わりました。

最後に貴社のこれからのビジョンを聞かせてください。

 

従来のルールエンジンは、if-thenの形式や表形式でルールを設定し、それを組み合わせて判断を自動化するアプローチが一般的でした。しかし、私たちは業務でもっと日常的に広く使われている判断基準の表現に着目し、その表現を直接取り入れて自動化を実現することを目指しています。

この新しいアプローチは、世の中のさまざまな判断基準に対応し、運用をスムーズにすることができると考えています。そして、ルールエンジンは非常に洗練されたものですが、最近では状況がより複雑になってきており、単純なif-thenのロジックだけでは物事を処理するのが難しくなっています。他のルールエンジンを提供するメーカーも、過去のシステムを引き継いでおり、結果として複雑なルール表現のままで止まっています。私たちはもっとシンプルに、そして原理原則に基づく基準に整理し、それをコンピューターが自動的に判断に使用できるようにすることを目指しています。これまでのif-thenの表現だけではなく、より分かりやすいルール表現を提供することで、業務の自動化を容易にしようとしています。

 

Googleなどのデータを集計することで、あらゆる情報が得られますが、正しい判断であるかは、その人の判断に委ねられます。AIが出した結果に、どのくらい信頼できるか、それが今のAIに対する社会的な課題です。私たちはこの課題の解決に向けて、今まで以上に良いサービスを提供していきたいと考えています。そのためには、より精度を高めた次世代型のルールエンジンの開発と、使い勝手の良いパッケージ商品の開発を進めています。AIが導く答えに誰もが安心できる世の中になるように願っています。

 

 

    

 

記事投稿日:2024年3月31日