株式会社MONOCO

株式会社MONOCO
感性が刺激されるお買い物で「たからものでいっぱいの人生」を。

柿山 丈博さん

株式会社MONOCO
代表取締役社長 柿山 丈博さん

“価値訴求型”お買い物サイト「MONOCO」運営

 

 

株式会社MONOCO

代表取締役社長 柿山 丈博さん

Takehiro Kakiyama

[プロフィール]
2010年、大学在学中にインターンからスタートしたプロジェクトをスピンオフ創業。その後、資金調達・拡大・会社の 縮小、そして再生・拡大を経験。2015年1月より、「たからものでいっぱいの人生」をテーマにしたお買い物サイト『MONOCO』をスタート。商品はすべて、スタッフが実際の生活で3週間以上使い、感動を体験した商品のみを取り扱う。これまでに、300ブランド以上のマーケティング支援を行い、会員数は29万人を突破。

 

「たからものでいっぱいの人生」を追求できる世の中に。

 
MONOCO(モノコ)」というお買い物サイトを運営しています。感性を大事にしながら、ストーリーでお買い物を楽しんでいただくサイトです。
ビジョンは「たからものでいっぱいの人生」。「たからもの」というのは、単に「もの」だけではなく、家族、仲間、思い出、旅先の場所、新しい趣味など、自分の大好きなあらゆる「モノ」と「コト」です。
そういう大好きな「モノ」と「コト」に囲まれていることが「たからものでいっぱいの人生」だとしたら、多くの人がそれを追求できる世の中にしたいと思っています。

 

そのために、自分の感性を大事にしながらお買い物を楽しんでいただきたい。ビジョンを実現するために、僕たちが日々果たすべき使命としては、人々の感性を刺激しなくはいけない。
ちょっとおこがましいですけど、どうやったら感性を刺激できるのかというと、自分たちが本当に感動したもの、心が動いたものを、自分たちの言葉で伝えていくということではないかと思います。
なので、MONOCOは社員が3週間以上実際に商品を使います。そして大好きになった商品を大好きなストーリーにしてお客様にお届けします。
感性を大事にしながら「ストーリーでお買い物を楽しむ」というサイトなんです。

 

 

フラッシュセールで始まったMONOCO。

MONOCOは2012年4月にスタートしましたが、当時はフラッシュセールという形式でした。短期間でブランド品の余剰在庫をクローズドな会員制サイトで安く売る、というのがフラッシュセールですが、そのデザイン雑貨と家具版でした。
当時のコンセプトは、「見たことがないデザイン雑貨と家具が最大70%オフで買える」というもの。海外で見つけた面白いデザイナーのポスターを仕入れ、1週間以内に3,000〜4,000円で売ったりして、かなり売れていました。
今の「ストーリーでお買い物を楽しむ」とは実態が違いますが、他にないものをしっかりと伝えていく、という本質は似ていたと思います。
しかし、価値を生んでいるのに最大70%オフで売っている、というのが心にひっかかる。フラッシュセールなので「今買わないと在庫がなくなります、この金額は今だけです!」とお客様を煽っているわけです。
その感じを例えると、思いっきりダッシュして前に進んでいるけれど、後ろ髪をつかまれながら走っているような…禿げてくるんですね。どんどん毛がなくなっていくような…(笑)。
お客様は増えましたが、ビジネスモデルが弱かったのでしょうね。
当時は、フロー型とストック型のコンテンツの2タイプがあるとしたら、完全にフロー型でした。

 

会社の存続危機、マイナスからのスタート。

そんななか、事件が起きたのが2014年。共同創業者が聞いていたキャッシュフローと実態が違い、想定の2倍も早く資金が溶けていたことが発覚したのです。
僕は当時会長でしたが連絡が来ないよう仕向けられていました。社長だったインドネシア人は逃げてしまって。会社は存続危機に陥り、億単位の債務が残りました。

忘れもしない2014年11月20日に、弁護士同席で社員全員を集めて「すみません、もうゲームオーバーです」と伝えました。当時、スタッフは25名いたのですが、カスタマーサポートの日本人以外、全員外国人でした。社員の就職先を探し、人生相談にのり…最後は自分はどうするんだ、となるわけです。
株主の半分の方々には、会社をたたもうと言われました。でももう半分の方々は、まだいける、「柿山さん、法人という漢字には“人”ってあるでしょう、それがあなたです。諦めなければそう簡単に潰れないのよ」とおっしゃるんです。
自問自答しまくったのち、いろんな方にご迷惑をかけてきたから、マイナスからのスタートだけどやってみよう、と思ったんです。

 

 

仲間に支えられ、新しいMONOCOへ。

マイナスからのスタートは本当に大変で。債券回収会社とのやりとりなど、午前中にネガティブな案件を解消してから、MONOCOのために自分で豊かな文章を書かなくてはいけない状況でした。もう二重人格にならないと無理だなと思いましたね(笑)。
この状況で僕が生きていられたのは、取引先メーカーのデザイナーさんたち、そして、妻と2人の仲間の存在があったからです。

デザイナーさんのところへ遊びにいくと、まだ商品になっていないものが置いてあったりして、「これなんですか?」と聞くと嬉しそうにお話してくださって。
そこで情報をいただき「ぜひ売らせてもらえませんか?」とお願いすると「やってみようか!」と。デザイナーの豊かな発想で、少しずつ癒されていきました。

その気持ちが商品を紹介する文章に伝わっていき、一人で記事を100本は書きました。その記事を元雑誌編集者の妻が、商品が売れる記事には3パターンの書き方があると分析。そこでライターを採用し、妻がそのパターンを仕組化してライターに教え、その間に僕が商品を集めました。

 

また、今の共同再創業者、和泉と鈴木とは2014年12月に出会いました。社員全員解雇の約2週間後というどん底の時です。それぞれが経営していたITコンサルティング会社を縮小し、その分の時間を僕に充ててくれました。妻と、和泉と鈴木には、本当に感謝しています。
そして、2015年1月1日、今の共同再創業者の和泉と鈴木、妻と4人でMONOCOを再立ち上げしました。

 

 

ストーリーで新しい出会いを提案する。

>再立ち上げで、フロー型からストック型コンテンツに変えました。2015年の再建当時に売っている商品は今も売っています。
やはり、世の中のサイクルが早すぎて商品提供者側のサイクルになっているように感じます。お客様からしたら、ものも情報も量が多すぎてしまって、何が欲しいのかわからないですよね。
例えば、使っていたものの新商品が出て「新商品です、前のものと比べて安いですよ」と言われても、「前のものでいい!」ということ、よくありませんか?今は、そういう状態が多くなっていると思います。

だから、MONOCOは新商品かどうかということはあまり気にしていません。出会い方さえ新しければ、お客様にとっては新商品なので。自分たちで吟味して、ストーリーをつくって、満を辞して世の中に出すわけですから、それが“新しい”わけです。
MONOCOは、商品選定をするブランドチーム、編集チーム、マーケティングチームほか、基本的にすべてのチームメンバーが商品を使います。
声高らかに「3週間以上使って、大好きなものしか売っていません」と言っていますので、多くのお客様から「MONOCOは3週間以上使っているから信用できる確かなものがある、でもちょっと高い」とお褒めの言葉をいただいています(笑)。

壮絶なものづくりをされている方々がやっと生み出した商品を、セールとかクーポンで売ってはいけないんです。お客様に感性と共感で買っていただいて、みんなで好きになれば、メーカーにも喜んでいただけます。
 

ストーリーテリングでファンを増やす。

MONOCOが「たからものでいっぱいの人生」を追求していくための場所、お客様にとってもっと身近な存在になっていければいいな、と思います。
メーカー、ブランド、商品のファンをコツコツ増やしていこう、というところでいくと、僕たちが今やっているのはストーリーテリングというマーケティングの手法です。

ストーリーテリングはストーリーを伝えて共感してもらう、ということなんですが、お客様、つまり買いたい人向けではないな、と僕は考えています。
お客様にとっては、ストーリーであることはあまり重要でなくていいと思っているんです。
何か買いたいな〜と思っているけど、今日は買わなくてもいい、MONOCOをぼーっと見ているだけでも楽しいな、という世界感です。

そんな感じで、僕たちが大好きになった商品を、大好きなストーリーにして届けて、お客様が日頃忘れていたような感情を取り戻せたり、考えてもみなかったこととの出会いがあったり、そういう感性の扉を開くというところでいいと思っています。

 

 

商品の魅力を再発見し伝えるメーカーのパートナーになる。

一方、メーカー、ブランドにとってストーリーテリングは大切です。メーカーの方たちでさえ気がついていない魅力を僕たちが見つけたりして、でもあえて書かなかったりもします。
すべての情報を知った上で、商品の魅力が際立つ情報を最初に伝え、下層にいくほど深い情報になるという、逆ピラミッド型の情報設計をしています。
メーカーの方にMONOCOに掲載する記事をチェックしていただくと「私たちの商品はこんなに良かった?」と連絡をいただけて、本当にうれしいです。

メーカーに自信をもってもらい、商品開発に専念してもらうために、MONOCOがそれ以外のことをできたらいい。だから、社外にデジタルマーケティングの事務局をもつような感覚でいてもらえると嬉しい、とお伝えしています。
「商品を卸すのではない、ストーリーテリングパートナーとして魅力を再発見して、お客様に伝えて、しかも売ってきます。こんなサイトが他にありますか?」と言うと、「わからない」と言われてしまうことも。では、まずはやってみましょう!(笑)と。
一緒に売ってマネタイズしていこうというスタンスで、メーカーにもフェアだし、お客様にもフェア。そういうビジネスモデルなんです。

 

「伝える」じゃなくて「伝わる」を大事に。

ストーリーテリングは、本当はいい言葉ではないなと思ったりもします。なぜなら「テリング」って「伝える」だけじゃないですか。
本当は「伝える」じゃなくて「伝わる」ということが大事で。伝わらないとお客様は商品を買わないですから。
人はなぜストーリーが好きか、についてハーバードビジネスレビューにも書いてあるのですが「変化」なんですよ。日常の会話でも「Aだった私がBをしてCになれた!」のような話し方をしますよね。AからCになったという変化をストーリーとして話している。
すごくそこが面白くて。人間の生活というか、人間学的なレベルで掘り下げられるべきことなのかなと思ったりします。
ストーリーについて体系化したビジネスモデルは少ないという印象です。この点においてMONOCOはとてもユニークなポジションを築きはじめているという感覚が強くなりました。

 

MONOCOの客層は40〜50歳以上の方が多いのですが、最近20代のお客様も増えてきました。
20代のお客様は、情報の吸収力が強く、商品ひとつ買うにしても、相当吟味されている方が多い印象です。
だからこそ、これはいけるな、と思っています。年齢関係なく質で勝負するためには、それぞれの世代へ「伝わる」伝え方を変えればいいと考えています。
2015年から2022年で7年経ち、コツコツ貯めてきた目に見えない資産をしっかりと積み上げていきながら、より多くの方に喜んでいただくことをやっていきたいです。

 

 

起業を目指す方へのメッセージ

「マイナスのスタートは大変だから、ゼロスタートは楽ちんだよ」でしょうか(笑)。
先の通り、2014年に億単位の債務が残ったときは2週間で15kg痩せるほど大変でしたが、18ヶ月で完済できました。でも借金返済という目標を果たしたとき、ゴールが見えなくなってしまって。
それでも、目の前に面白いことがいっぱいあったので、何かやってやろう!という想いはありました。
世の中ではどうしても「安くて早くて便利」が求められ、インターネットがコンビニみたいになっている。そんななかでも心が豊かになるものをしっかりと提案していく、というあえてイバラの道というか、難しい道を選びました。「易きに走るな」ということですよね。
簡単な方向に行くと、自分自身が成長しないんです。だからこそ、難しい方向を選んでいるのだと思います。

 

 

記事投稿日:2022年9月30日