株式会社ライフシフト

株式会社ライフシフト
人生100年時代を生きる人たちが現役を続けるための力を育む。

徳岡 晃一郎さん

株式会社ライフシフト
代表取締役会長 CEO徳岡 晃一郎さん

企業研修/ミドルシニア層活躍に向けた組織・人事コンサルティング/社会人向け専門校運営

 

 


株式会社ライフシフト
代表取締役会長 CEO
徳岡 晃一郎さん
Koichiro Tokuoka

[プロフィール]
日産自動車人事部、欧州日産などを経て、フライシュマン・ヒラード・ジャパンにてシニアバイスプレジデント/パートナー。 人事、企業変革、社内コミュニケーション、リーダーシップ開発および、レピュテーションマネジメント、グローバルコミュニケーションなどに関するコンサルティングに従事。2006年より多摩大学大学院教授を兼務し、研究科長などを歴任。知識創造理論を基にした「Management by Belief(MBB:思いのマネジメント)」を一橋大学 野中郁次郎 名誉教授、一條和生教授と提唱している。還暦を機に2017年ライフシフト社を創業し、ライフシフト大学を開校。東京大学教養学部卒業、オックスフォード大学経営学修士修了。

 

人生にチャレンジする勇気を40代・50代の会社員へ。

 

「人生100年時代」の今、40代後半から50代の現役会社員は、定年後の人生をどう生きていくのかという問題に直面しています。その一方で、企業側も無力化した社員が65歳まで社内に滞留することに危機感を抱いています。そこで、当社は「終身知創」というコンセプトのもと、企業内研修や異業種交流型研修とデジタル技術を駆使した「ライフシフト」を促すプラットフォームにより、いつまでも学び続ける機会を提供し、30代から50代の働く方々へいつまでも人生にチャレンジする勇気を与えていくことを目指しています。

 

当社は、私が還暦の年に設立した会社です。その1年前に「ライフシフト」という本が出版され、そこに「人生は100年なのだから80歳まで現役で働かなければいけない時代」と書いてありました。私はそれを読み自分事として「60歳という時期はとても重要」と改めて気づかされたんですね。
自分の同期を見てもそうですが、世の中のシニアは全般的に定年で退職すると、その時は「もう会社に通わなくていいんだ」とすっきりした気分になるものです。
ところが、あと40年間をどう生きていくかについては深く考えません。ましてや、もっと長く生きる可能性がある40代、50代の人たちでさえ、先のキャリアのことまで考えているとはとても思えません。「何とか定年を迎えるまで張ろう」という感じでしかないんですね。

 

定年までのキャリア後半をいかに有効に使うか。あるいは早めに会社の外へ出てしまって第二の人生を歩み出すのか。そういうことを40代、50代から考え始めることは非常に大切で、そのサポートができないかと会社を立ち上げたのです。

 

企業の姿勢も変化する中、大事なのは本人の意識変革。

企業側もどちらかというと若い人たちをどうやって育てるかというほうにお金を回すし、研修プログラム自体もあまり将来のキャリアを考える内容になっていないことが多いんですね。そこで当社ではそうしたキャリア形成のプログラムを提供し、気づきを高めて自分の人生のために学び直しをしてもらおうとしています。

 

折しも近年は、職業能力を再開発する「リスキリング」や「人的資本経営」といったキーワードが謳われるようになり、社員のキャリア形成や学び直しを支援していくという流れも出てきています。ただし、当の本人たちは自分事だと思っていないから、当社がそこの橋渡しを行い、長く現役で使えるような力を身につける教育を行っていきます。

 

諦めモードに入っている「粘土層」対策が重要。

40歳くらいになると「自分のキャリアはもう終わったかな」とか「いろいろなことについていけなくなった」と感じる会社員は少なくないんですね。特に、成果主義が激しい時代の中で「若い人たちより明らかに劣っちゃっているよね」と考えてしまったり、「この年齢ではもう役職につくのは難しいだろう」と諦めてしまったりするわけです。

 

企業の中のそういう人たちを私は「粘土層」と呼んでいるのですが、若い世代の重しになる、あるいはぶら下がってしまう人たちが社内に増えても、企業側は65歳まで雇い続けないといけないわけです。それでは生産性も非常に悪くなるし、イノベーションの足かせにもなります。企業にとって「粘土層」対策は重要なのです。

 

会社も若い人じゃないから「粘土層」にあれこれ言わないわけです。だから、会社の中で何に貢献できるのかを自覚してもらうように彼らにきちんと現状と未来に向き合っていただき、企業の活性化に結びつけることが当社のプログラムの大きな目的です。
さらに言えば、若い人たちだけで事業のイノベーションを起こせるかというと、そんなことはないわけです。少子化ですから、生産性の向上や会社の成長に経験豊富なシニアの人たちをどういうふうに巻き込むかはとても重要なのです。

 

青銀共創」と言いますが、ヤング(青年)とシニア(シルバー)が共にクリエーションする状態をどうやって作っていくか。それができれば企業にとって大きな成長やイノベーションのリソースになるわけです。
それが「人的資本経営」なのですが、シニア層が積み重ねてきた自分の知見をどうすればイノベーションに向けられるのか、あるいは若者とどうやってうまく付き合っていくのか、つまりポジティブな部分を伸ばし、ネガティブなものを排除して、事業のイノベーションや会社の成長に絡んでもらうかが企業にとっては大きな課題になります。そこが私たちが目指す理念なのです。

 

若い社員はシニア層にもっとイキイキしてほしい。

 

企業の若い社員たちはシニア層にどうあってほしいのかを当社は調査しているのですが、「もっとイキイキしてほしい」という声が多いんですね。やはり社内の雰囲気が暗くなったり、何か教えてもらいたくても聞きづらい雰囲気だったりするので、「もっと前に出てきてほしい」「一緒に取り組んでほしい」と思うのです。
そうした調査結果をシニア社員に見せれば、「自分は期待されていないと思い込んでいたけど違うんだ」「もっと頑張っていいんだ」といった気づきが得られます。その後で、5年先とか10年先のキャリアプランを考えてもらうことは、自分がどんな価値を生むことができるのかを考える機会になります。

 

ミドルやシニアのモチベーションを高める方法は、まずキャリアに対する認識を持ってもらい、さらにそれを実現していくために学び直しをしてもらうという2段階になります。
大学などで社会人や主婦に対して行う「リカレント教育」は、まず「何を学ぶのか」から入るのですが、「なぜ学ぶのか」、すなわち「その後のキャリアをどう考えていくのか」についてはなかなか行わないものです。それをきちんと行うのが当社の特徴です。

自分の歴史や経験したことを振り返り、60代や70代の将来ビジョンを描き、あるいは一緒に学ぶ人たちと話し合い刺激を受けながら、夢や志を見出すことに時間をかけます。

 

プログラムの主体はイノベーションを起こすための学習。

しかし、キャリアを再構築していく必要性がわかったとしても、どういう方向で再構築するかを考えるのも大切です。
大きくは2つの方向があり、1つはよく言われる「小さな仕事」というものです。「パン屋をやります」とか「自分のスキルを活かして誰にも頼らず生きていけるようにします」というパターン。それはそれで全然良いのですが、企業がイノベーションをもっと起こしていくことが日本の再生のためにはすごく重要です。
「イノベーション」などというと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、企業で培ってきた知恵や技能をどうやって活かしていくのか、企業の中で自分はどういう役割を演じることができるのか、それで企業価値をどう高められるのかまで考えるのがもう1つのパターンです。そうした後者のイノベーションを起こすための学習も「イノベーターシップ」という形でやっていただきます。

 

当社が提供するサービスは、B to BとB to Cの双方があり、B to Bは企業向けに、粘土層になってしまわないように社員を勇気づけるのと、イノベーションのスキルを身につけてもらうことを目的とするプログラムです。
B to Cの方は「ライフシフト大学」という社会人向けの専門校を開設し異業種の仲間たちと5カ月間にわたり土曜日に学び合う場を提供し、個人で申し込んでいただいています。いわば自分の未来のキャリアを考える学習の場です。

 

 

現役中にトーンダウンするのは定年の先を見ていないから。

 

企業向けプログラムの場合、受講者はどちらかというと「65歳まで会社にいられるのだから今のままやっていきます」という感じの人が多いですね。そういう人に対しては「もっと第一線の意識を持ち続けてほしい」と言います。
やはり自分からトーンダウンしていると、周りからあまり相手にされていないと思ってしまいます。特に役職定年のようなものがあると給料も下がってしまうからモチベーションが上がらないわけで、「粛々とやりますよ」みたいな感じになってしまうんですね。

 

企業側にも問題があるのですが、仮にそこから65歳まで何も学ばなかったらどんどん使えない人になっていくだけです。「80歳まで現役」と謳ったところで、そこまで頑張れる力も衰えてしまいます。そこで、定年の先を見せることで「やっぱりこのままでは駄目かも」と気づいてもらうようにしています。

 

イノベーション×キャリア=ライフシフト。

 

モチベーションを高めるためにまず大切なのは、やるべきこと、できることをきちんと自覚し、やりきる目標を設定することです。企業側も、例えば管理職でない社員をもきちんと処遇することで、社員も会社ももっと伸びていくと思うんですね。やるべきことなのにやれていない、やれる人がいるのにそこに当てがっていないという無駄遣いをしているわけですよ。それで本人も「こんなものかな?」と思ってしまう。
そこを変えていくのがライフシフトという会社のミッションで、そういう意味で、「イノベーション」と「キャリア」を掛け算して出る答えが「ライフシフト」という定義にしています。

 

受講した人たちからは、「自分の人生について考えてこなかったけれど、これはまずいと思いました」あるいは「まだまだ期待されているのに、引いていた自分もいた。もう一度考え直さなくては」といった声が聞かれます。
やはり「自分にはビジョンがない」ということに気づくケースは多いですね。
企業向けプログラムの受講生はその後を直接フォローすることができないのですが、ライフシフト大学に通った人たちについては、会社を辞めてフリーランスになったとか、会社の中で違う部署に応募したとか、キャリアの選択を自ら行う人が出てきています。やはり個人で申し込んできているので意識は高いですね。

 

イノベーションを起こすには教養も大事。

今後の事業展開としては、社会全体にオンラインが定着する中、やはり授業のオンライン化やeラーニングの講座を増やしていく方針です。中高年に向けたリスキリングの講座というものは現状ではあまりないんですよね。どちらかというと若い人向けのものがほとんどです。

 

当社では、中高年向けのプログラムを強化するために、歴史や世界観など教養系の講座も増やしていく予定です。というのも、イノベーションを起こすためには、何を未来の目標にするかをまず考えなくてはいけないのですが、そうなると教養はすごく大事です。これからの世の中で何が求められるのかとか、どういう価値観を持たないといけないのかといったことがしっかり考えられる、いわば基礎体力をつけるための教養ですね。

 

人生100年時代を歩む方々へのメッセージ

環境の変化に適応しネガティブな仕事状況に対処する個人の能力を「キャリアレジリエンス」と言いますが、やはり人生100年時代を乗り切るためにはそうしたものが必要になります。
今の仕事を一生懸命やることで、あるいはいろいろな経験を積み重ねいくことで自分を高め続けてください。そして、当社が提供するサービスはそれを目指す場なので、ぜひ活用してください。

 

記事投稿日:2023年3月8日