COTS COTS LTD

COTS COTS LTD
ウガンダや東アフリカ諸国で
日本食振興を行う実業家

清水 政宏さん

COTS COTS LTD
共同代表清水 政宏さん

COTS COTS LTD(コツコツリミテッド)
共同代表
清水 政宏さん/Masahiro Shimizu
京都大学経済学部卒業後、外資系証券会社、海外ヘッジファンドなどを経て2015年ウガンダにCOTS COTS LTDを創業。2018年に日本料理店「YAMASEN Japanese Restaurant」及び商業施設「Tank Hill Park」を開業し、ウガンダを中心に東アフリカで日本食振興をおこなう。また、タンザニアを起点とした東アフリカの水産バリューチェーンを構築するなど多岐に渡る事業を展開。日本の技術や文化を活かしながら東アフリカの産業を創出する試みをおこなっている。

 

 

世界的な日本食ブームが
アフリカにも少しずつ波及

 

―貴社のビジネスや事業の取り組みを教えてください。

 

私たちはアフリカのウガンダで、日本料理店と商業施設を運営しています。日本料理店は2018年に開業し、5年ほど経ったところです。ウガンダは内陸国で海がないので、魚を仕入れる際には、隣国のタンザニアを経由します。そのため、タンザニアの近海で捕れた魚をウガンダで提供するための水産バリューチェーンも構築しています。将来的には中東や日本に輸出するつもりです。また、ウガンダで生産された農産品を日本に輸出する事業なども展開しています。メイン事業が日本料理店なので、その話をすると、レストランに来ていただけるお客様は、欧米の駐在員やインド系、現地駐在の日本の方など現地在住の外国人が多いです。

 

しかし最近では、ウガンダ人の方もよく来られるようになりました。彼らの所得が徐々に上がってきていることもありますが、コロナ禍の際に現地在住の外国人がみな本国に帰ってしまった際に、メニューを見直してラーメンや丼などこれまで扱っていなかったものを出したことなどがきっかけで日本食に馴染みのなかった方々が来店するようになったようです。コロナの状況が緩和された今でも客足が絶えずお越しいただいています。ウガンダでも鮨のことを知っている人はいますが、やはり内陸国なので、生魚はあまり食べません。

その点、ラーメンは世界中で流行っているので、知名度もあってヒットに結びついたと考えられます。また、お店はFarm to Tableを掲げており、現地の素材を最大限に生かした日本食を提供する方針で、ティラピアという淡水に棲む白身魚の揚げ物なども人気ですし、YAMASENとは別業態で日本の洋食も提供しており、カレーやハンバーグなども受け入れられています。また、日本食は世界的にブームなので、当社の日本料理店がアフリカで一番イケてるスポットと言われるようになってくれたら嬉しいですね。

 

 

 

 

トレーダーから実業家に
偶然から生まれたキャリア

 

―どうして日本の食文化がないウガンダでレストランを開業したのですか?

ビジネスの経緯を教えてください。

 

新卒で証券会社に勤務し、その後シンガポールのファンドに転職しました。しかし、そのファンドは2年ほどで解散しました。再び働くまでの空白の期間に、何かおもしろいことをしようと考えて、「一番遠くに住む友人に会いに行く」ことを思い付き、大学の後輩がウガンダに住んでいたので、会いに行きました。

友人や現地在住の日本人たちと話をするなかで、「ウガンダは人口がすごい勢いで増えているのに、外食をするところがあまりない。これからは外で食事をする機会が増えるだろう」という話題になりました。友人の知り合いに京都で日本料理店を経営している人がおり、「ウガンダで店を出さないか」と、声をかけると、なんと彼は承諾し、ウガンダに移住してくれました。

余談ですが、京都の店を閉じる際に「ウガンダに移転しました」という張り紙を残したそうです。すると、常連のお客様がわざわざウガンダまで来てくれました。それほどのファンがいるお店だったようです。

 

このような経緯でウガンダの外食文化の成長に可能性を感じた私は、法人を設立し、日本料理店と複数のテナントが入る商業施設をオープンさせました。現地に根差す企業を目指しているのでもちろん、スタッフは現地のウガンダ人を採用します。ウガンダ人スタッフのほとんどが日本食が未経験なので、日本の食文化やサービスを全く知らない状況で1から学びながらのスタートでした。お店は現在ウガンダ人約40名、日本人3名で運営しています。

 

 

 

 

アフリカ他国でも信頼を得る
ウガンダ在住の日本料理人

 

―ウガンダには他の日本料理店はありますか?あれば貴社との違いを教えてください。

 

ウガンダや隣国のケニアにはいくつかの日本料理店があります。ケニアの首都ナイロビには日本人経営のお店がいくつかあります。とはいえまだまだ数も少ないので、競合というよりはお互いに情報交換をおこなったりする仲間である側面が強いです。

その中で私たちのお店は比較的高価格帯で本格的なコースが楽しめるという評判を得おり、先日、隣国ケニアの老舗ホテルで日本とケニアの国交60周年記念イベントに招かれ、1週間ランチとディナーのコースを提供しました。また、当社はウガンダ人の料理人・サービスの育成にも注力しており、通常メニューについてはウガンダの料理人が担当している他、コースの一部もウガンダ人の副料理長が担っています。彼は元々インド料理のシェフでしたが、日本料理を学びたいという理由で当社に入社し、今ではコース料理のひとつを担当できるほどに成長しました。

 

このような育成を通してゆくゆくは日本人以外の方でも料理長として現場で活躍してもらえるようになればと思っています。そうなれば、将来的、アメリカのカルフォルニアロールのように、ウガンダ発の日本料理が誕生するかもしれません。そして、私たちのレストランも、ウガンダだけでなく、他のアフリカの国に進出したいと考えています。

 

 

 

 

飲食業の成功の次を考えて
交流の多い港区を日本の拠点に

 

―港区を拠点に活動されている理由をお聞かせください。

 

ウガンダで開業したレストランは、地道な努力が受け入れられて、一定の成果を上げられたと実感しています。ただ、まだまだやりたいことが多く、特に今後は水産バリューチェーンの構築と東アフリカでの日本食の振興に力を入れたいと思っています。内陸国のウガンダでは、まだ魚を仕入れるのが難しく、私たちが作って来た水産バリューチェーンをもっと活性化させていく必要があります。

 

また、近年日本食材の輸出が盛んになってきていますが、アジアや北米などに比べてアフリカ地域においてはまだまだ伸びる余地があります。水産分野にせよ日本食の分野にせよ港区には、たくさんの関連する企業や飲食業があるので、このような私たちのビジョンに関心を持ってくれることを期待して日本での拠点にしました。

港区産業振興センターを拠点に移してから、行政や銀行との連絡がスムーズにおこなえるようになりました。この利便性は、スピード感が重要視される私たちのようなベンチャーにとって心強いですし、とても気に入っています。

 

 

 

 

日本企業と協力して産業を活性化
ウガンダへの貢献を使命に思う

 

―貴社のこれからのビジョンと海外に向けて事業を考えている方にメッセージをください。

 

元々、ウガンダや東アフリカの人々の生活向上に資する産業を創るというビジョンで活動をしており、今後も産業創出をテーマに事業をおこなっていきます。

「アフリカはポテンシャルがある」と言う言葉を最近よく耳にしますが、実は100年前のイギリス人も同じことを言っており、ポテンシャルがなかなか形になって現地の人々に裨益する機会が訪れません。ウガンダにせよタンザニアにせよ、さまざまな要因で産業が生まれてこないことに起因するわけですが、これを民間の小さなところから変えていきたいと思っています。

 

私たちはもちろん、利益を追求する民間企業ではありますが、産業を創っていく試みは非常に時間と手間がかかり、その割にリターンが見出しにくいのが現状です。以前キハダマグロの漁に同行したことがあったのですが、なかなか効率的な漁法とは言い難く、漁法の指導を踏まえた実証を始めることにしました。また、漁港の仲買人を対象に初期的な水産加工の指導をおこなっています。

そして、この取り組みは自体が収益化するにはかなりの時間がかかりますが、誰かがやらないと「ポテンシャル」のまま時間が過ぎてしまいます。このように非常に長期的な視点が必要ではありますが、アフリカにはまだ多くのビジネスチャンスが潜んでいます。アフリカでの事業に興味がある方は一緒に協力していきましょう。

 

これから事業を始められる方に私からできるアドバイスは、勢いだけではうまくいかないのできちんと準備をすること、そしてこれまでの経験を最大限生かすことが大切だと伝えたいです。

アフリカでのビジネスは、どれだけ準備してもそれを簡単に破壊するような不測の事態であふれています。そんな状況でも準備をすることで、まだ冷静に対応できますし、直接的に経験がなくても、これまで生きてきた中での経験やスキルが違う形で役立つことはあります。私も金融業から和食文化が未開拓のウガンダで飲食業に挑戦しましたが、前職の経験が生きています。ひとつの世界に身を置いて、一生懸命に働くと、例えどんな分野でもやっていける自信が生まれます。いわゆる先進地域でないゆえに行けば何とかなるだろう、今の環境が嫌だから飛び出してしまえという理由だけでなく、着実な計画と準備を重ねて、まずは確実に成果を上げていくことが、独立後の成功の鍵だと思っています。急いで結果を出すよりも確実に成功体験を積み重ねてください。

 

 

 

記事投稿日:2024年3月31日