株式会社グリッド

株式会社グリッド
独自の先端AI技術とデジタルツイン技術を融合させた最適化技術で社会インフラを構築。

中村 秀樹さん

株式会社グリッド
取締役/事業開発本部長中村 秀樹さん

社会インフラ分野を中心にAIテクノロジーの提供、Industry SaaS「ReNom Apps」の開発・提供

株式会社グリッド
取締役/事業開発本部長
中村 秀樹さん
Hideki Nakamura

[プロフィール]
1971年生まれ、一級建築士。大学で建築を学ぶ。学生時代はバックパッカーで国内・海外の様々な都市や街を歩き周る。その中阪神大震災が起き、被災者ながら様々なボランティア活動に参加し、改めて現代社会においてのインフラやコミュニティーの大切さを肌で感じる。その経験を通して、建築デザインからインフラデザインへ志向が変わり、重電関連会社に就職、大小様々なプロジェクトに関わる。その後、建築・不動産会社に転職、環境共生型建築開発から電気・ガスなどのインフラ会社との共同事業、新会社設立、子供職業体験施設開発などに関わる。2009年GRIDの創業メンバーとして、太陽光事業をきっかけに人々の生活を幸せにする様々な事業を世の中に創出していきたいと考え、国内・海外で日々活動中。

インフラを支える企業との連携で多くの人々の暮らしをサポート。

「INFRASTRUCTURE(インフラ)+LIFE+INNOVATION」はグリッドが掲げるフィロソフィーです。
私は神戸出身なのですが、学生時代に阪神淡路大震災を経験し、小学校で一年間生活しました。そのときに思ったのがインフラが整っていることの大切さでした。例えば、避難生活が始まったときはお互いに助け合いの精神でいますが、次第に不便に感じることが増えるとちょっとしたことで言い合いをするようになるんです。
そんな姿を見て、インフラが整っていないと人との関係性が壊れてしまうんだなと痛感しました。この経験が僕の原点ともいえますし、「テクノロジーによってイノベーションを起こし、よりよい社会をつくりたい」という会社としての理念にもなっています。

 

極端な話になりますが、例えば一人の裕福な方の財産を増やすことにテクノロジーを使うよりも、世界中の人たちが幸せになれるようなことに弊社のサービスを活用していきたいと考えています。もちろん、グリッドを設立した当初は、会社として信用していただくまでに時間がかかりましたし、世界中にアプローチしたくても難しい状況でした。
ですが、エネルギーや交通、空間、生活などのインフラを支えているさまざまな企業と連携すれば、結果的に多くの人々の暮らしをサポートできるのではないかと考え、社会基盤を支える現場の計画業務を最適化するために、独自の先端AI技術とデジタルツイン技術を融合させた最適化技術の開発を進めていったのです。

 

データサイエンスや産業界を理解する優秀なメンバーが揃っています。

弊社には、データアナリストやITエンジニアなど若くて優秀なメンバーが揃っているのですが、それぞれがデータサイエンスや産業界のこともちゃんと把握しています。どれかひとつの分野に強い人はたくさんいると思いますが、データサイエンスや産業界のことも理解している人材がいるというのは弊社の大きな特徴といえます。
また、社内での育成にも力を入れていますので、入社後に知識を身につけたり理解を深めたりすることが可能です。

 

弊社を優秀なメンバーが支えているように、インフラ企業には“その道何十年”というプロフェッショナルな人がいて、そういった方々がオペレーションを行ってあらゆる業務を支えています。ですから、AIを使ったコストカットや業務の効率化、CO2削減の話をすると、長年オペレーションを行ってきた方々は“仕事が無くなるのではないかと不安に感じてしまう事もあります。
その不安を取り除くために、必ず現場の方々と意見交換をして、一緒にプロジェクトを進めるようにしています。“対話”はとても大切ですから、AIを導入するサービスを提供する前に、しっかりとご理解いただくようにしています。

AIを導入することで計画業務の最適化が可能に。

「インフラ×AI」がなぜ計画業務の最適化を可能にするのか。先ほど熟練の方がオペレーションをしているという話をしましたが、人間は “これまでの成功体験”に引っ張られて、思い込みをする場合がありますよね。
ところが世の中や経済は、例えば円安やエネルギーの高騰など日々めまぐるしく変化していて、インフラ業界はそういった変化にも対応していかなければいけません。そんな時に人間の強い味方となるのがAIなんです。AIは一度にたくさんの計算を秒でできてしまうので、現場の方々の熟練値みたいなところを紐解くことで、未来の状況をシミュレートし、さらに何をどう行動すれば最適な結果が得られるのかを判断することができるのです。

 

生産設備の制約や稼働条件など、現実世界の物理的なモノやシステムをデジタルの世界にそのまま再現し、それに関わるすべてのコストや時間を計算させることで、最適なソリューションを導きます。
特定のアルゴリズム/手法に拘わらず、必要に応じ組み合わせた「アルゴリズムミックス」により複数の手法の検討・実施が可能なので、企業にとって最適なアプローチを幅広い観点から提案させていただいています。

 

実績を作った配船計画最適化の実証実験。

実際に最適化AI技術を活用した実証実験を行った例として、出光興産株式会社様との「内航船による海上運送(以下、配船)計画の最適化」があります。

 

どういう実証実験かといいますと、これまで石油元売り業界の喫緊の課題であった熟練担当者の経験や職人技に依存した配船計画策定を、AI最適化技術を用いて最適化および自動化を目指したものになります。
例えば、各都道府県にある石油タンクには需要と供給があって、どこかのタンクの石油の需要が増えるとどんどん石油が減っていくので、他のタンクとやりとりしながら調整しているんですね。それをこれまで何十年もの間、熟練の方が電話やメール、FAXなどを駆使して対応されていました。
ところがAIですと1週間先や1ヶ月先の気象データなどから予測することができるんですね。弊社は、実際に製油所から油槽所へ製品を海上輸送する現実の配船オペレーションを再現するシミュレーターを構築及びAI配船最適化モデルの構築を行い、過去実績データとAI配船結果との比較検証を行った結果、安定供給を実現しつつ輸送効率を最大約20%改善できる配船計画の作成に成功しました。

 

 

これにより輸送コスト削減を図るとともに、属人化しがちであった配船計画業務の標準化ができ、さらには燃料消費量の低減による環境負荷軽減に貢献できたといえます。

 

さらにこの実証実験の結果、オペレーションチームの従業員の方々の計画作業時間が1/60までに減少しました。配船計画最適化の実験の成功に自信を持てたのと同時に、弊社としては、業務に関わる方の業務効率化を実現できたのは嬉しかったです。

脱炭素化と経済コスト最大化を両立した「ReNom GX」がNIKKEI脱炭素アワードプロジェクト部門の大賞を受賞

弊社は近年の脱炭素ブーム以前からCO2の排出量を減らすことを目指して、また人々の生活を便利に快適にするために様々なソリューションサービスを提供してきました。いまは多くの企業が脱炭素化に取り組もうとしていますが、そのほとんどが具体的な方法がわからず困っているといいます。
弊社は大手企業様との実証実験からのシステム導入で実績を作っていますので、様々な大手企業からのお問い合わせが多く、新たなサービスを提供しようと2022年の3月に、製造業やサプライチェーンの脱炭素化と経済コスト最大化を両立した、未来に起こりうる仮説を設定して対応策を導く「シナリオプランニング」を実現するシステム「ReNom GX」(リノーム・ジーエックス)を開発しました。

 

「ReNom GX」は、CO2排出量の減少やコストの削減を実現するだけでなく、自社の製品製造工程で排出される「Scope1、2」、その前後で発生する輸送、配送をはじめとした「Scope3」を網羅したサプライチェーン全域をシミュレーション範囲として再現することができます。
これにより、サプライチェーン全体での最適化が可能となり、産業界のCO2削減と生産コストの効率化により企業成長が期待できるため、好評価を得ています。

 

結果、「ReNom GX」は、日本経済新聞社が主催する「NIKKEI脱炭素アワード2021」の「プロジェクト部門」で大賞を受賞いたしました。今後もブームで終わらず脱炭素を持続化していくためにも、さらに多くの企業に弊社のサービスを活用していただきたいと思っています。

 

都市を最適化して、便利でよりよい暮らしをサポートしたい。

今後、会社として力を入れて取り組もうとしているのが都市の最適化です。人や電力、交通インフラなど、都市開発に必要な各要素を計画に基づき、シミュレーション可能な環境をデジタルツイン上に再現し、ニューノーマル時代に即した新たな都市開発をデザインすることを目的としています。

 

 

現在、プロジェクトとして進めているのがソフトバンク、東京大学(Beyond AI研究機構)小田急電鉄との実証実験です。大型ショッピングモール「ビナウォーク」がある神奈川県海老名市の海老名駅は、小田急小田原線、JR相鉄線、相模鉄道線の3線のターミナル駅で、一日の乗客数20万人以上と言われています。それほど人の流れが多いということは、駅のデータや商業施設のデータなどを集結させればいろんなことが見えてくるんですね。
弊社は、そういった人の集まる大きなエリアにあるものを繋いでいき、バラバラになっているデータを合わせることで、人々にとって便利で快適な暮らし作りができると考えています。そんな理想的な都市作りを実現するために、このプロジェクトは2023年以降に導入を予定しています。

 

グリッドは、今後もエリアの特性を生かした形で最適な都市の姿をデザインし、時代に即した新しいまちづくりを、設計から実装まで責任を持ってサポートしていきたいと考えています。

 

最初にお話しした弊社の理念である「INFRASTRUCTURE(インフラ)+LIFE+INNOVATION」は、真ん中に「ライフ」がはいっています。それはつまり、“人々の生活を豊かにしたい”という思いを常に持っているということ。これまで培ってきたAI開発の技術を活かし、都市機能の可視化やAIによる予測分析によって安心かつ豊かな社会にできるよう邁進していきたいと思います。

 

記事投稿日:2023年3月8日