株式会社フットボール・テクノロジーズ
株式会社フットボール・テクノロジーズ
AIの提案で自分だけのハーブティーを
楽しめるサービスを展開
株式会社フットボール・テクノロジーズ
代表取締役CEO井本 貴明

代表取締役CEO
井本 貴明さん/Takaaki Imoto
2004年NTTコミュニケーションズ入社。ネットワークエンジニアとして、法人向け国際ネットワークの保守、開通業務に従事。
2009年よりNTTレゾナントに出向し、「PinQA」「Lappy」などのWebサービスの新規開発を立ち上げ、開発、運用に関わる。ユーザー体験をデザイン面からサポートすることを得意とする。
2014年にスタートアップの「ミューゼオ」へ参画。ミューゼオでは、開発責任者の立場から、フロントデザイン、ユーザーサポート、外部アライアンス提携などを担当。
2020年にフットボール・テクノロージーズ社を創設。
AIによる提案で
自分だけのハーブティーを
―「フットボールテクノロジーズ」では、どのような事業を展開していますか。
大きく2つの事業を行っています。1つがシステムやアプリの受託開発、もう1つが自社サービスの提供です。自社サービスの新規事業が、「ハーブティー×AI」のサブスクサービス「Be By Tea」です。
AIに今の気分を伝えることで8種類の茶葉から最適なブレンドを提案してもらって、自分だけのハーブティーを飲むことができます。
―それぞれの事業にはどのような理念が込められているのでしょうか。
根底には「社会を良くしたい」という思いがあります。以前は「スポーツ×社会」という形で、スポーツを通して健康的で文化的に育まれた社会を作りにチャレンジしていました。
現在は事業内容を若干転換して、ハーブティーによって個人の自律神経を整えて、調子の良い状態で仕事ができる環境を整えたいと考えています。
―「Be By Tea」の事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
もともと私は朝に仕事を始めるスイッチとしてコーヒーを飲んでいましたが、1日3杯飲んでいるうちに胃に不調をきたしてしまいました。そこでコーヒーに代わるものとして最初は紅茶や緑茶を試したのですが、もう少し味のバリエーションがほしいと思ってハーブティーに行きつきました。
ハーブティーはブレンドすることで無限大の可能性がありますし、頭痛や風邪に効く漢方薬のような効果もあるので面白いと思いましたね。
ある日、茶葉を買ってきて試しにChatGPTに「今の気分に合うブレンドを提案して」と聞いたら良い答えが返ってきたんです。これをサービスとして提供したら面白いのではないかと考えたのが「Be By Tea」を始めたきっかけです。
面白かったのは、妻とけんかした時に「イライラする」とChatGPTに言ったら「そうだよね」と寄り添ってくれて、「けんかでイライラした時は、こういうブレンドを飲むと気持ちが落ち着いて家庭が円満になるよ」という、あまり一般的ではない答えを出してくれたことですね。実際に飲んでイライラが少し収まった気がしました(笑)
―その経験をもとに開発した「Be By Tea」を企業向けの福利厚生として展開していますね。
企業に提供しようと思ったきっかけは、以前勤務していた会社で、メンタルの不調から休職する人を見てきたことや、夏場にクーラーが効きすぎて寒くなっている人など、オフィスで何かしらの不調を抱え、100%の力を発揮できていない人が多いなと感じたからです。働く人に、個人の不調に適したハーブティーを飲んでもらい、100%に近い状態で仕事ができる環境を整えられたらと思いました。

―「Be By Tea」で提供しているハーブティーは、どのように選んだのでしょうか。
100%オーガニックの茶葉にこだわり、「BORDERLESS FARM」という会社に決めました。理由は、商品が100%オーガニックであること、ソーシャルインクルージョンやフェアトレードに力を入れていることです。
「BORDERLESS FARM」はミャンマーの貧しい地域にハーブ作り産業を持ち込み、そこから仕入れたハーブを適正価格で売っています。貧しい地域に貢献していることやその背景にある理念に強く共感しました。
―AIと会話するサービスを作るうえで工夫した点はありますか。
特に工夫した点は4つあります。
1つ目は、誰でも簡単に使えるようにすることAIとの会話で、自由入力と共に、選択肢のボタンからも回答できるなど、気軽さにこだわりました。
2つ目は、どんなにおいしいハーブティーを提案しても体験自体がつまらなかったら継続しないので、AIとのやりとりをチャーミングにしたり出力結果を面白い内容にしたりと、楽しさを大切にしていることです。
3つ目が、誰でも安心して飲めるようにしていることです。例えば妊婦さんが飲んではいけない種類などは絶対に提案しないようガイドラインをしっかりと作っています。
4つ目が、AIの特性を生かして個人のカスタマイズができるようにしている点です。
前回飲んだハーブティーの満足度を評価できるので、その結果を元に、AIが提案を自分好みにカスタマイズしてくれます。「たまごっち」のように自分専用のAIを育てる感覚があります。
―「Be By Tea」の開発にあたっては、利用者からの意見も重視したそうですね。
意見を聞いてとり入れたことの1つ目はデザインです。
おしゃれな美容室に置いてもらえることを1つの軸にしました。おしゃれな美容室に置けるのであれば、自宅やカフェ、オフィスなどでもインテリアとして置けると考えたからです。知り合いの美容師の方にプロトタイプの段階から見てもらい、やりとりを繰り返した末に、今のデザインができました。
2つ目が、提供方法です。
最初は大きなティーポットで提供しようと思っていましたが、知り合いの女性から「片付けが面倒だ」という意見をもらいました。例えば職場でティーポットを使った時に、誰がそのティーポットやコップを洗うのか、ということです。そこで使い切りのティーバッグや紙コップも提供する形にして、洗い物の手間や衛生面といった課題もクリアしました。

企業や美容室などに導入
ハーブティーの魅力を広める
―現在、福利厚生として企業などで導入が始まっている「Be By Tea」ですが、どのような導入事例があるのでしょうか。
今のところ、企業、飲食店、美容室、コワーキングスペース、病院などで導入事例があります。
―お客様の声にはどのようなものがありますか。
印象的なのは美容室からいただいたお声ですね。
最初は、「Be By Tea」は個人レベルで自律神経を整えるということと、人が集まって給湯室のようににぎやかに過ごせる空間をつくるということの2点を強みとしていました。
ですが美容室では、接客のアイスブレイクのツールとして「Be By Tea」が使われていることが分かりました。お客様がAIに伝えた体調や悩みをきっかけに、お客様と美容師との間で最初の会話が膨らんだという話を聞いたんです。単なるお茶を出すという行為にとどまらず、アイスブレイクのツールとして利用されているのは印象的でしたね。
―今後の「Be By Tea」の展開について、どのような構想を描いていますか。
まずは、会社にハーブティーを置かせてもらって終わりという現在の形から、運用までを弊社が担当する「フルマネージドサービス」の展開を始めました。
具体的には契約して頂いている企業の会議室などを利用させてもらい、社員の方向けにハーブティーの試飲会を定期的に実施します。そこで実際に飲んでもらうことでハーブティーの魅力に気づいてもらい、設置してある「Be By Tea」の継続利用につなげたいと思っています。
実際に試飲会を開催したら、参加された社員の方同士でAIが提案したハーブティーを飲み比べて、「これ、美味しいね」「綺麗な色だね」などと、知らない人同士の会話が生まれていたことが印象的でした。中には、試飲会をきっかけにハーブティーを飲み始めて、コーヒーによる「カフェイン依存」が無くなった方もいるようです。
試飲会を開催する度に、設置している「Be By Tea」の茶葉を弊社のスタッフが完全補充するので、 企業側で発生する発注、補充作業などの運用の手間が省けるのも好評です。

2つ目が、ハーブの種類を増やして、個人のお客様でも簡単に買えるようにしていくことです。企業や美容室などで「Be By Tea」を試して、「いいな」と思ってくださった方が自宅でも楽しめるようにしたいですね。
―ハーブティーが好きな方は女性が多いイメージがありますが、利用する人の男女比や年齢層はいかがでしょうか。
導入してくださっている企業からは、ハーブティーを飲んでいるのは女性の方が中心で、男性の利用が少ないという話を聞いています。だからこそ、男性にもハーブティーを広げていきたいという思いがあります。将来的には、ハーブティーの産業規模をコーヒーと同じくらいにまで大きくしたいです。そのためには男性にも、会社や美容室でハーブティーに親しんでもらうことが大事だと考えています。
起業直後にコロナ禍に
落ち込む暇はなく、すぐに方向転換
―井本さんはもともとエンジニアとしてキャリアを積んできたのですよね。
はい、大学ではプログラミングなどを学び、新卒でNTTコミュニケーションズという会社に入って、海底ケーブルの補修や開通などに携わりました。そこからどんどんウェブに関わることが増え、ウェブサービスの新規開発事業部などを経験しましたね。
―NTTコミュニケーションズを経て、次はどんなキャリアを歩まれたのでしょうか。
NTTで10年ほど働いた後に、知人と2人でスタートアップ「ミューゼオ」を立ち上げました。知人がコレクターの集まるSNSを作りたいという夢を持っていて、システムを作れる私が加わることになりました。最初は2人で始め、5~6年後には十数人規模の会社になりましたが、そのころに独立して「フットボール・テクノロジーズ」を設立しました。
―大企業からスタートアップに転じたのですね。
スタートアップでは、営業、PR、マーケティングから開発までマルチタスクをこなすのが大変でした。
でも大変だったのはそのくらいで、楽しさの方が大きかったです。NTTでは何かを購入するにも複数の決裁を通すなど、1つのアクションに様々なプロセスがあったので、自分の思ったことをどんどん形にできるスタートアップの進め方はとても良いと思っています。
それに、マルチタスクの経験は、今1人で「Be By Tea」事業をするのにも生きていますし、営業を通じて社交性も身につきました。
―フットボール・テクノロジーズを1人で立ち上げた経緯を教えてください。
独立を考えた時は、ちょうど子どもが生まれたばかりのタイミングでした。そんな時に自分の人生を振り返って本当に好きなことを考えた時に、思い浮かんだのがテクノロジーとサッカーだったんです。サッカーは昔から見るのもプレイするのもずっと好きでした。その2つを組み合わせて何かできないかと考えて、2019年に会社を立ち上げました。
―最初はどんな事業をしていたのでしょうか。
サッカーのコート上にAIのカメラをつけて、試合を自動で録画したり、サッカークラブ向けに「Slack」(チームコミュニケーションツール)のようなサービスを提供したりといった事業構想を考えていましたね。
ただ、会社を立ち上げた直後にコロナ禍になってしまいました。サッカークラブの活動が全て中止になり、他社のシステム開発などの業務委託に力を入れました。
―コロナでサッカーの事業が続けられなくなってしまった時、どうやってモチベーションを保ったのでしょうか。
心が折れたのは間違いないですが、その後は「家計を早くなんとかしないと」という思いの方が強かったので、落ち込んでいる暇はあまりなかったですね。
受託した仕事自体は楽しく、いろんなチャレンジをさせてもらいました。最近もAIを使ったプロダクト作りに関わり、自分の視野も技術も広がりました。様々な経験ができたのは良かったと思っています。

―その後、受託だけでなく自社サービスも立ち上げたのは、やはりご自身のやりたいことを重視されたからなのでしょうか。
「社会を良くしたい」という思いが根本にあるのですが、それを受託した仕事で直接感じるのは少し難しかったです。間接的に社会に貢献できていても、手伝っている感覚が強く、自社サービスの方がより自分が世の中に貢献している実感を持てるだろうと思いました。
―「社会を良くしたい」という思いの原体験はあったのでしょうか。
最初に入った会社の先輩がそのことを口癖のように言っていました。「仕事はただやっても意味がない。社会を良くするためにやっているんだよ」と言っていたのが強く影響していると思います。
―起業して6年、起業の醍醐味を感じる瞬間はどんな時ですか。
自宅やコワーキングスペースなど自由な場所で働けるのと、時間もある程度選べるので、「いつ」「どこで」を自分で選べるのが魅力だと思います。そして自分がやりたいと思った事業ができることですね。他の人の稟議を通す必要も決裁を取る必要もありません。
やらない後悔よりやる後悔を
起業でやりたいことを実現
―井本さんは先日、港区産業振興センターで「Be By Tea」を使ってハーブティーをふるまうイベントを開催しました。参加した皆さんの反応はいかがでしたか。
普段ハーブティーを飲まない方が多く、赤や青や黄色など様々な色のハーブティーがあることに驚かれている方が多かったです。「飲みやすい」「美味しい」という感想もたくさんいただきました。
―普段から産業振興センターを利用しているそうですが、気に入っている点を教えてください。
開催されている様々なイベントに参加できるのが良いところです。大使館による講演など、勉強会のようなイベントにはよく参加していますね。
「ヨリミチ部」という、参加者同士が交流できるイベントも月1回あり、そこでハーブティーの宣伝をしたり、センターがある田町駅周辺で働かれている他社の方と知り合ったりもできます。
―最後に、これから起業を考えている人へメッセージをお願いします。
やらないよりやって後悔した方が良いと思う性格なので、同じような性格の方はやってみるほうががいいと思います。組織の中にいると自分がやりたいことをできない場面は必ず出てくるので、それを実現させるための起業という側面もあるのではないでしょうか。
ただ大変なこともたくさんあるので、リスクヘッジも大事です。例えば私が起業する時には、困ったら業務委託の仕事を受けられるという前提があり、ある程度リスクヘッジができていました。これから起業する方も、いきなり全面的に事業を展開するより、副業から始めて徐々に広げていく形が良いのではないかと思います。

記事投稿日:2026年1月20日


