星野 芳夫

「祖父の代からこの店を構え、ここ10年くらいから、私が三代目として三味線づくりを受け継いでおります。三味線はオーダーメイドですから、お客様の希望に応えるために完璧を期してつくらせていただいています」

 

奏でる人に合わせた三味線づくりが信条と語る星野さん。子どものころから三味線づくりの手伝いを通して、三味線づくりの難しさを感じていたとも。「棹、糸巻き、胴、どれか一つでも出来が悪いと、いい三味線はできません。それだけに、仕事はどの工程も入念にしていかないと成りません」

 

分業でつくる大阪の三味線と違い、東京の三味線は職人による手づくりが特長でした。しかし近年、東京の三味線づくりも徐々に分業化が進んできたといいます。

 

「分業といっても棹の部分だけですね。胴づくりと皮張りは私たちがやっています。とくに三味線の音は皮張りの善し悪しで、ほとんど決まってきます。張りすぎれば破れてしまう。ゆるめれば、だれる。この機微は、長年の経験がなければできません」三味線の命を左右する大切な工程に職人の技が生きてくるというわけです。

 

「三味線が持つ日本人の琴線をゆさぶる音色は、むかしから伝わる義太夫、長唄、常盤津、清元、新内などに今も受け継がれていますが、最近はジャズのほかいろいろなジャンルに三味線が進出しているんですよ。私は三味線の魅力をもっとたくさんの人に知ってほしいから、いまの潮流は大歓迎です」ギターも演奏するという音楽ファンでもある星野さん。ふだん聴く音楽も三味線の音色には敏感であるようです。

 

「三味線の伝統は、つくり手が守ればいいと思うのです。もちろん日本の古典音楽としての三味線も残すべきだと思いますが、音楽家は三味線に息吹を与えて伝統にとらわれず自由に演奏すべきだと思うんです。三味線の魅力をもっと引き出してほしいですよね。楽器は言葉を超えた世界共通のものですから。私たち職人は、伝統的な技法を守り、そして探究しながら広がる三味線の世界をサポートしていきたいですね」

 

星野さんの三味線にかける夢は、音楽の世界と同様に広がり続けています。

 

(有)三田菊岡・三田二丁目