GoMA株式会社

GoMA株式会社
学生時代に起業し
「現場で使えるAI」導入を支援

平賀 良

GoMA株式会社
代表取締役平賀 良

GoMA株式会社
代表取締役
平賀 良さん/Ryo Hiraga

2019年4月 東京工業大学物質理工学院 入学。
材料科学の分野での起業を目指し研究活動を行っていたが、研究領域での起業の難しさを知り、同年12月にGoMA株式会社を創業。代表取締役に就任。
以降、CRM構築基盤「グルービー」の開発、提供を行い、25万人が利用するサービスへ成長。
近年では、AI需要に対応するため「伴走型AI支援」と称したAI導入のコンサルティングから開発、事業成長までを一環して支援する事業会社へ。

 

 

LINEを活用したCRMで
最適なマーケティングを提供

 

―GoMA株式会社の成り立ちと、現在の事業内容について教えてください。

 

GoMAは、私が東京工業大学(現在の東京科学大学)の大学院に在籍していた際に、当時110番目の大学認定ベンチャーとして登記された会社です。大学からの直接的支援があったわけではないのですが、この認定を受けたことで、設立当初の何もない状態でも一定の信頼を得ることができたのは大きかったですね。現在は、港区にある東京科学大学の田町キャンパス内にオフィスを構えています。

事業としてはLINEを活用したCRM(顧客管理システム)によるマーケティング支援から、AI導入のコンサルティング型伴走支援まで幅広く手掛けています。

 

―“GoMA”という社名にはどういった意味が込められているのでしょうか。

 

技術力を売りにした開発会社ではあるのですが、結局人が欲しいと思わないものでは意味がなくて、「売れないものを作るのはやめよう。マーケットが必要としているものを作ろう」という決意から、「ゴー・マーケティング(人が必要とするものに向かう)」という意味を込めて“GoMA”と名付けました。

 

―初期の主力事業であったCRMはどのようなものですか。

 

もともとは特にLINEを活用した顧客管理を主軸としていました。例えば、とあるフィットネスクラブでは店舗に来ていないお客様とコミュニケーションを取れずにそのまま退会されてしまうという課題があった中で、クーポン配信やアンケートをLINEで行う仕組みを作りました。

 

ただこれは単なる配信ツールではなくて、来店などのアクションをトリガーにクーポンを渡すといったようなマーケティングオートメーションと呼ばれる側面を持っています。これまでのCRMは、会員データや商品購入履歴といった各種データは持っていたのですが、保有システムが分断されていたためにお客様1人1人の行動データをまとめられず、本当に求められているものを提供することができていませんでした。そうしたデータを集約してマーケティング活動を行おうというのが弊社のサービスです。

 

また、自治体向けのソリューションとして、道路の損傷や災害被害についてLINEで写真やGoogleマップの位置情報とともに通報できるシステムなども提供してきました。自治体の中には当初独自のアプリで似たサービスを行うケースもあったのですが、LINEを活用したサービスは、ダウンロードなどの手間の少なさから利用者を増やしやすいのだと思います。

 

 

 

 

経営層の「判断」を
現場で「使えるAI」に

 

―そこから事業の中心をAIソリューションへとシフトしたきっかけは何ですか。

 

3〜4年ほど前から、チャットGPTはじめ精度の高いAIが話題になり、企業側から「AIを使いたい」というニーズが急増したことが大きな理由です。先ほどのCRM同様にデータを1つに集約し、AIを使ってより事業の効率化を行いたいという要望に応えるため、AI導入支援へと舵を切りました。

 

ただそれ以上に大きかったのは、従来の受託開発モデルに対する危機感でした。AIの登場により、ソースコードの記述やテストなどの開発自体が自動化されつつあります。これまでの単価を維持しながらCRMなどの開発を受注し続けることは今後難しくなります。であれば、少人数の体制のままでも技術の進化と同じスピード感を持ってより大規模な案件に対応できるよう、AIを駆使した開発体制へシフトし、さらにその先のデータ活用に軸足を置くべきだと判断しました。

 

―AI導入をめぐって多くの企業が抱える課題をどう見ていますか。

 

経営層が号令をかけてAIを使ったシステムを導入したものの、現場がどう使えばいいかわからず、結局浸透していないというケースが非常に多いです。AIをただ導入すればいいというよりも、製造業やBtoCといった業種別、あるいは現場別の業務フローに適合した、現場が使いやすいモデルやシステムに対する需要がどんどん増えていると思います。

 

―GoMA社が提供するAIソリューションの強みを教えてください。

 

市場にあふれるAI企業はパッケージを売るだけのSaaS企業か、言われたものを作るだけのベンダーに二極化していますが、前者では現場への深い浸透や本質的な課題解決には至りません。一方で後者も、変化の激しいビジネス現場のニーズに柔軟に応えることが困難です。そこで私たちは、その中間に位置するコンサルティング型の伴走支援を行っています。

 

具体的には、業界ごとの業務フローを詳細に定義した上で、AIが真価を発揮できるようデータを整える下準備から入ります。そして、単にモデルを選定するだけでなく、実際に工場や営業所などの現場に足を運び、デモを通じて本当に現場で使えるかを検証しながら開発を進めます。

 

私たちの最大の強みは、作って終わりではない継続的なパートナーシップにあります。ヒアリングした課題を基に開発したプロダクトを運用し、そこで生まれるデータを分析し、需要予測やそれに基づく在庫管理、人員配置シフト、生産体制への投資の最適化といった次なる課題を掘り起こし、解決し続ける。このサイクルを回すことで1社あたりの取引単価は年次で向上し続けます。一般的なSaaS企業のように広告宣伝費をかけて社数を追うのではなく、1社1社に深く入り込み、パートナーとして伴走し続けることで営業コストを抑えながら事業を成長させるモデルこそが、私たちの強みです。

 

 

 

 

―具体的なAIツールの事例はありますか。

 

新人研修や人事異動などに役立つ動画マニュアル管理サービスがあります 。実際の作業を動画で撮ってアップするだけで、AIが字幕生成、要約、不要部分のカットを自動で行います。YouTubeのような形式で簡単にマニュアルが作れるため、製造業や店舗での引き継ぎコストを大幅に下げることができます。

 

このサービスは売り物というより営業商材としてまず現場に提供し、契約前の段階で「本当に使える」という確信を持っていただくために使用しています。現場で実際に触れていただくことで、お客様はAI活用の具体的なイメージをつかみ、私たちは現場の生の声を吸い上げて真の経営課題を特定することが可能になります。そこから深い信頼関係に基づくコンサルティングや伴走支援へと繋げることで、その企業に真に最適化されたAI導入を実現していることが、多くのお客様にご評価いただいているポイントではないでしょうか。

 

 

これからのAI市場では
「開発」よりも「データ分析」で勝負

 

―今後のAI市場と競争優位性をどう予測していますか。

 

AIの進化により開発スピードは劇的に上がっています。かつて30人で取り組んでいた開発が、今や1、2人がAIと議論するだけでできてしまいます。そうなると単にシステムが作れることの優位性はなくなり、今後はどれだけ顧客のデータを持っているか、そしてそのデータをどう分析して利益に変えるかという分析力の勝負になります。

 

加えてこれまでのAI活用需要は、既存のWebサービスやシステム上に一部機能を組み込む形が主流でした。しかし今後は、AIが企業の在庫・仕入れ・営業数値といった、本来一続きであるはずのデータに横断的にアクセスし、自ら利益最大化のための最適な判断を下す時代が来るのではと思います。私たちの比重も、現在のAI受託開発が落ち着き次第、こうしたデータ活用業務へ本格的にシフトしていきます。2〜3年後には単なる開発会社ではなく、データを利益に変える分析・シミュレーションをメイン事業に据え、先行したデータ収集や経験をもとに次世代の主流となるところのど真ん中で勝負したいですね。

 

―「ロールアップ戦略」という構想も掲げていますね。

 

はい。自社で対応しきれていない「潜在顧客」を取り込むため、M&Aによるグループ拡大を計画しています。現在は開発・AIコンサルが主軸ですが、お客様の中には「システム構築の前段階の営業支援をしてほしい」「Webサイトや動画を作りたい」といった、より手前の課題を持つ層が数多く存在しています。そうした会社には適切な提案ができず、お客様を取りこぼしている現状があります。そのため営業支援、デザイン、人材など専門性を持つ会社をグループの仲間に迎えることで、顧客との接点を広げていく。そこを入り口に深い課題を吸い上げ、最終的にAI開発やコンサルへと繋げることで、商談までのリードタイムを短縮し営業効率を最大化させる狙いがあります。

 

―モデルにしている企業はありますか。

 

ベンチマークというのはおこがましいですが、徹底した仕組み化で異業種からの人材もエンジニアとして活躍できる教育・採用の仕組みを整え、急成長を遂げた株式会社SHIFTはビジネスモデルにしています。我が社も再現性のある成長の仕組み化を自社に落とし込み、長期的な視点で事業を大きく育てていきたいと考えています。ただ一方で、開発会社として根幹にあるのは常に開発力という強みです。技術へのリスペクトを組織の主軸に据え、開発会社だからこそ提供できる価値を忘れない。この軸をぶらさずに持ち続けることが、組織の専門性を高め、独自の強みを維持することに繋がると考えています。

 

 

大きな組織に縛られない
研究からビジネスの道へ

 

―学生時代に起業を決意した理由は何だったのでしょうか。

 

起業を意識し始めたのは、大学3、4年生の頃です。将来について自分なりに考えた結果、既存の大きな組織の枠組みに収まるよりも、起業や研究といった組織に縛られないスタイルが自分には合っていると思ったことが原点です。

 

大学院では金属材料系の研究(脳血管治療用カテーテルの生体適合性の最適な材料開発)に没頭していたので当初はその研究分野で起業したいと思っていましたが、その分野は非常にアカデミックで、物性検査はじめ研究成果が実際に医療現場で実用化されるまでに何年もの歳月を要する大変な世界でした。当時の私はもっと手近な場所で、スピード感を持って社会に貢献したいという思いが強かったんです。そこで、まずは始めやすいIT分野での受託開発から1人でスタートし、少しずつ事業を拡大させていく道を選びました。

 

―学生起業を経験して、良かったことや大変だったことはありますか。

 

就職後に独立した同級生と比べ、圧倒的に早い段階で安定した基盤を築けたことは人生において大きな財産になりました。おかげで結婚や家族計画といった人生のライフイベントも、過度にリスクを恐れることなく柔軟に描くことができています。仕事と休みのスケジュールをはじめ、自分の人生をすべて自分でコントロールできる自由度の高さは大きなやりがいに繋がっています。

 

一方で、住宅ローンの審査が通りにくいといった社会的信用の低さには直面しました。会社に入っていたら補助を受けながらマンションを買えたのかな、なんて思います(笑)。また、社会人経験を積んでから起業する方に比べると、初期の組織運営・経営ノウハウで差を感じ、周囲に教えを請いながら手探りで乗り越える場面も多かったですね。

 

何より、経営者として痛感したのは「孤独」との向き合い方です。どれほど信頼できるメンバーがいても、すべてを話すのは気が引けますし、最終的な意思決定の責任は自分1人にあります。結局は自分自身の問題ですから状況が異なる他の経営者に相談することはあっても、答えを求めることはできません。

 

 

 

 

港区・田町から、
地域密着型の経営を目指して

 

―港区立産業振興センターなどの支援も活用されているそうですね。

 

田町に住んで7年になりますが、港区の支援は非常に手厚いと感じています。創業融資や利子負担制度、展示会出展の補助金などは積極的に活用しています。また、ハード・ソフト両面でのサポートもありがたいですね。中小企業診断士の方への事業計画書作成の相談、さらにはビジネスサポートファクトリーのコワーキングスペースで他の企業やクリエイターの方々と交流するなど、この環境があるからこそ生まれる繋がりを大切にしています。

 

今度開催される「みな・さんfes.2026」のような地域イベントへの参加もその一環です。会場となる東京科学大学のキャンパス内には、実は30社ほどのベンチャー企業が入居するオフィス拠点があるのですが、意外と知られていないんですよね。イベントを通じてこうした活動を知っていただくと同時に、地域の企業や住民の皆さんと情報交換ができることを楽しみにしています。

 

―地域社会との関わりについて、どのような思いがありますか。

 

ビジネスだけでなく、町内会の餅つきや火の用心といった下町っぽい活動にも参加して、地域に根差した関係を作りたいと思っています。田町は子育てもしやすいですし、ママ・パパの繋がりから新しい仕事や個人活動の支援に繋がることもあります。地域密着型の経営者として、この場所で貢献していきたいですね。

 

―最後に、これから起業を考えている人へメッセージをお願いします。

 

アイデアと行動力さえあれば、今は行政のサポートも手厚いですし、便利になったAIを使って効率的に事業を立ち上げられる素晴らしい環境です。やらないことによるメリットはそんなにないと思います。まずは走り出してみる、わからないことはAIや周囲に聞く。その一歩が、自分の道を作ることに繋がります。

 

 

 

 

 

記事投稿日:2026年3月12日