株式会社FIXER
株式会社FIXER
ノーコード・ローコードによるアプリ開発支援でDXを推進
株式会社FIXER
中尾 公一さん/荒井 隆徳さん
クラウドネイティブなエンタープライズシステム構築に強みを持つクラウドインテグレーター
執行役員
中尾 公一さん
Koichi Nakano
[プロフィール]
2003年に国内大手生保のIT子会社に入社後、株式会社FIXERに2014年3月参画。
2021年より現職。
FIXER Senior Solutions Specialist / Azure Training instructor
荒井 隆徳さん
Takanori Arai
[プロフィール]
大手ITベンダーでシステム基盤構築業務を従事後、エンジニアの未来はクラウドにあると信じ、2018年にFIXERへ入社。システム基盤構築業務の経験を活かしAzure案件の提案に携わるほか、クラウド未経験者やオンプレミスエンジニア向けにクラウド技術に関する講義活動を行い、クラウド人材育成に貢献している。2022年9月発行『Microsoft Power Platform ローコード開発〔活用〕入門』(株式会社FIXER・著/日本マイクロソフト株式会社・監修)の執筆に参画。
グローバル品質のクラウド技術でDXを推進する。
株式会社FIXERは2009年に創業しました。2022年現在、従業員は約200名、平均年齢が29歳と非常に若い会社です。事業所は東京都港区の本社に加え、名古屋に1カ所、四日市に2カ所あります。四日市では、エンジニア100名以上が勤務する重要な開発拠点のほか、市民や地域企業の方々に向けてDX人材育成講座や各種セミナーなどをご提供するためのクラウドAIスクールという施設も運営しています。
私たちが大事にしているミッションは、「日本のエンタープライズシステムにグローバル品質のクラウドパワーを」です。これまでの日本のIT業界は、お客様に御用聞きをしながら不要な再開発を繰り返し、長い時間と莫大な費用を要したあげくに、リリースした瞬間から陳腐化するようなシステムをたくさん作ってきました。競争力強化に寄与しないシステム開発を日本の企業が繰り返しているあいだに、グローバルでは企業が競争で勝つためにテクノロジーとまっすぐ向き合っていました。本日のノーコード・ローコードのお話にもつながりますが、クラウド技術の大幅な進歩により、高度なITサービスが蛇口をひねる感覚で利用できるようになりました。グローバルでは、クラウドで提供されるサービスを組み合わせ、早く安くサービスをデリバリーすることでどんどんビジネスの価値を生み出していくことが当たり前になっています。私たちは、それらのグローバルの企業が当たり前にやっているクラウドの活用方法をいち早く吸収し、日本の企業のお客様にお届けしています。
私たちは、クラウドの技術を最大限に活用しながらお客様のDXを支援してきました。その実績が評価され、2021年にはマイクロソフトの米国本社から世界4,400社のパートナー企業のなかでもっともクラウドネイティブな技術力を有しているという評価(アワード)をいただきました。
中堅・小規模企業のDXの鍵となる「ノーコード・ローコード開発」とは?
中堅・小規模企業のDX支援の切り札として私たちがご提案しているのが、ノーコード・ローコード開発です。ノーコード・ローコード開発とは、コードを書く行為、つまりプログラミングを必要とせずに動くアプリケーションを開発できる手法です。私たちは、ノーコード・ローコード開発のツールとして「Microsoft Power Platform」をご提案しています。「Microsoft Power Platform」では、PowerPointのようにドラッグアンドドロップのマウス操作を基本にしてアプリが構築できます。さらに、Excel関数のような動きを定義するコードが用意されていて、それらを使えばもっと複雑な処理を設定することができます。
「Microsoft Power Platform」の強みは、オフィス製品との親和性が高く連携もスムーズなことです。操作性もそっくりなので、オフィス製品を仕事で使っている人には使いやすいでしょう。また、顧客管理などのメジャーなクラウドサービスと連携できるコネクタが700個以上用意されているため、すでに導入しているツールなどの既存データを利活用することが可能です。このデータ連携はすべてノーコードで可能です。まったく新しいアプリケーションをゼロから開発して運用に落とし込むわけではないのではじめやすいと思います。
テクノロジーがコモディティ化した今こそノーコード・ローコードを活用
私たちは中堅・小規模企業のお客様向けに「ノーコード・ローコードを活用する時代」つまり「プログラミング経験がなくてもデジタル人材になれる時代」についてお話をすることが多いのですが、その背景には、テクノロジーがクラウドの進化とともにコモディティ化、つまり電気や水道のように身近に使うことができるインフラのような存在になってきたことがあります。そのくらい簡単な時代になってきた今、ITの専門人材をたくさん抱える必要はありません。限られた人材で高いパフォーマンスを追求する中堅・小規模企業の皆様こそ、クラウドの利便性を活用していきましょう、とご提案しています。
具体的にイメージしやすいように例として「ITをマグロの寿司一貫を頼むように調達できていますか?」というお話をします。日本のIT業界のこれまでは、お客様の「マグロの寿司一貫が欲しい」というニーズに対して、「まずシャリが必要なので稲作して米を収穫、マグロ漁船と漁師も手配して…」という提案をしていました。必要なものをゼロから準備して、最終的には企画書・計画書が何十ページにも膨らみ「1案件20億です」となるわけです。当然時間もかかります。
では、欧米では同じニーズにどのように対応していたかというと、あらかじめシャリは炊いておき、マグロの切り身も用意していました。「シャリとマグロ一切れを握って、一貫300円です」このようなスピードとコストでITサービスをデリバリーするようになっていたんです。これをすべてクラウドを活用して行うのが欧米の主流となっていました。
日本政府も数年前に「クラウド・バイ・デフォルト」と宣言し積極的に推進するようになりましたが、欧米にはまだ追いついていない状況です。繰り返しになりますが、特に地方の中堅・小規模企業がこれからDXに取り組むのであれば、スピードやコストを考えても欧米スタイル、つまりクラウドを活用することがおすすめです。「しかしクラウドと言ってもよくわからないし…」と尻込みされてしまうお客様には、理解しやすいノーコード・ローコードの利便性をお話しています。
プログラミング経験がなくてもデジタル人材になれる時代に
コロナ禍でニューノーマル対応が迫られるなど外部環境が激変し、企業のDXへの取り組みはより一層加速、対応できる技術人材も圧倒的に不足しています。2030年までに供給不足になる職種と供給過剰になる職種があると言われ、専門職(IT技術者含む)は170万人不足する一方で、事務職は120万人が供給過剰になると言われています(三菱総合研究所「大ミスマッチ時代を乗り越える人材戦略 第2回 人材需給の定量試算:技術シナリオ分析が示す職の大ミスマッチ時代」より引用)。
一見悲観的なデータですが、事務職の人材が一人でも多くデジタル人材に生まれ変わったら、国にとっても企業にとってもインパクトがありますよね。まさしく最近、岸田総理が2022年10月の所信表明演説で表明した「リスキリング(re-skilling)」つまり、社会や産業のデジタル化で必要になっている成長産業分野の人材を増やす施策につながる取り組みになります。
具体的には、企業内の情報システム部門に所属する技術人材ではなく、他の業務部門でITを活用していた人材、つまりエンジニアではない人材が一人でも多くデジタル人材になることを目指しています。限られたリソースで中堅・小規模企業がDXを実現するには、このアプローチしかないと考えています。このような、プログラミング経験がなくても、自分の業務をデジタル化できるような人材を私たちは「Citizen Developer」と呼んでいます。
「既存の社内業務」がDX化のターゲット。
DX化のターゲットになる業務は「既存の社内業務」です。地域の企業であれば、既存の社内業務のDX化で狙う効果はふたつあります。ひとつは、業務を効率化して人手不足を解消する、もうひとつは副次的なメリットですが、クラウドに重要データをバックアップして事業継続性を確保する、ということです。
業務の効率化、つまり生産性向上がポイントになります。セミナーなどで「職場に紙があふれていたり、同じ入力作業をいたるところで手入力していたりなど、売上に直結しない作業で残業していませんか?」「客先で会社のデータにアクセスできず、業務報告をするためだけに帰社していませんか?」と伺うと、みなさん頷くわけです。
日本の労働生産性は主要先進国のなかでも下位で、稼ぐ力は欧米に負けていると言われています。新しく始めることには、「じゃあシステムも同時に稼働させて…」となることも多いですが、継続している業務の効率化となると出来上がっているものを変える手間を惜しんでしまう。結果、価値を生まない作業にも時間を使ってしまうんですね。対して欧米ではそういった作業は機械やシステムに任せて、もっと生産性の高い仕事をすることに重きを置いています。日本はこの点で負けてしまっていたので、ここにメスを入れましょうと、ということです。
隙間業務のデジタル化で作業負荷を軽減する。
既存の社内業務にも、経理システム、営業管理システムなど何かしらのシステムを導入している状況だと思います。こういったシステムとシステムの間に落ちている隙間業務が、手入力だったり紙ベースの作業だったりして残っていることが非常に多い。実は、このような業務が生産性を落としています。では、なぜ隙間業務をデジタル化できていないのかというと、ベンダーに頼むほど投資対効果が出ないからです。そのため従来の運用を続けることになるのですが、長く継続する中で隙間業務の属人化が発生し、結果業務の生産性や効率化を阻害することにつながるのです。
ノーコード・ローコードを活用することで、こういった隙間業務を自分達で自動化することが可能になります。進め方としては、対象となる業務を分析し、どこに隙間業務があってその業務がどのような要件かということを洗い出す必要があります。
具体的なイメージをつかんでいただくために、一例として弊社の経理業務をDXしたケースをご紹介しましょう。FIXERの経理業務を分析してみたところ、経費精算システムから会計システムにデータを取り込む際に手作業が発生していました。システム間のデータフォーマットが揃っていないために、取り込みの際にデータのフォーマット変換を経理担当者が手入力で行なっていたのです。そこで、ノーコード・ローコードで自動化し、経費精算システムのデータが自動的にフォーマット変換できるシステムを構築。業務削減が実現できました。
社員30名、そのうち10名がバックオフィス、20名が営業など社外フィールドに出ている企業を例に考えてみましょう。PC作業をしている1〜3名が「Citizen Developer」であれば、業務の効率化によりバックオフィスの2名分の作業負荷を削減でき、フィールドへの配置転換も可能になります。また、フィールドで業務する社員が、クラウドサービスのアプリをタブレットなどで活用できれば、タイムリーな情報共有などにより業務に変化が生まれるでしょう。私たちが、特に中堅・小規模企業の皆さんにおすすめする理由がご理解いただけるのではないでしょうか。
「Citizen Developer」の育成でDX化を自走で行えるよう支援。
弊社の支援サービスのケースとして、四日市市商工会議所さんと一緒に行った例があります。四日市市商工会議所の会員企業4,000社向けに、ノーコード・ローコード人材の育成支援に取り組みました。
まず、「DX自走応援セミナー」を受講いただき、ノーコード・ローコードで何ができるのかを体験していただきます。体験で関心を持っていただけた方は試行フェーズに移り、1ヶ月集中の「ハンズオン集中養成講座」受講いただきます。こちらはかなり充実した学びになっています。さらに、講座を通して学んだことを活かして実際の一部業務にDXを適用、運用までを行ってみます。まずは一部業務でDX化の一連の作業を行ったうえで全社業務へ範囲を広げていただくという形です。このような体験、試行、適用、活用の流れでご支援しています。
中堅・小規模企業のDX化を進める場合、トップの意向がとても大切です。そのためFIXERでは、地方銀行と一緒にDXコンサルティングを推進することも考えています。銀行にとっても顧客企業のDX化が進み事業拡大につながることはプラスですよね。銀行はまさに経営者とつながっています。一緒にアプローチすることで、自社の未来につながるDXをトップにきちんと理解していただくことができるのです。
ノーコード・ローコードの今後の技術発展について。
1995年にMicrosoft Windows 95が発売されましたが、これもDXのひとつと言えます。マウスで直感的にコンピューターを操作できることは大きなジャンプでした。そして、表計算ソフトExcelが誕生し、マクロも組むことができ、アプリケーションが必要だった複雑な処理が、個人の端末で可能になりました。これも大きなジャンプですね。しかし、Excelでできることには限界がありますし、個人が自身の端末の中で使用するためシステム部門の管理が及ばない“野良のアプリ”ができてしまうという弊害もありました。
ようやく2、3年前から、クラウドですべて「見える化」するということが定着してきました。個人が何をつくっているのかを管理かつデータもすべて見ることができ、さらに構造が簡単であるという世界の実現です。これがいわゆるノーコード・ローコードです。
さらに今後はAIが裏についてきます。例えば「こんなアプリをつくりたい」という文章を作ったら、AIが理解してある程度のプログラムを作ってくれる、ということがもう実現しています。これは、5年ほどで実用化されるのではないかと思います。
DX化支援で地域企業を変えていく。
FIXERが中堅・小規模企業へのノーコード・ローコード活用促進に着目した背景としては、四日市市に拠点を移したことが大きかったです。銀行や大手自動車メーカーなど1案件何億〜何十億という東京のお客様の大規模案件を進める一方で、四日市に進出し地域企業の現実を目の当たりにしたときに「なぜこんなにDXが進まないのだろう」という課題意識をもちました。日本の企業はほとんどが中堅・小規模企業です。日本という国自体をDXで変えていくためには、中堅・小規模企業が変化し、積極的にDXを推進していくことが非常に重要であると感じました。
東京だけでビジネスをしていたらこのような状況も見えていませんし、このような想いに至らなかったかもしれません。四日市市の方々と真剣に向き合ったときに、この構造が見えてきました。ですから、地域企業を救済するためには、全力でノーコード・ローコード活用を提案・支援するしかない、そう考えています。
大企業であっても、システム部門のエンジニアは難しい開発を担当し、文系出身の方は身近な業務をある程度自分でデジタル化するというような、ハイブリッドになる時代がもう来ています。あと5年もすれば、今Excelを使うように、ノーコード・ローコードツールも使うようになるのではないでしょうか。私たちFIXERもハイブリットに対応し、ノーコード・ローコードによるDX化を支援することで、お客さまのビジネスの価値を高めていきたいと思います。
【著書紹介】
現場のDXに役立つ業務アプリサンプルのレシピを解説
『Microsoft Power Platform ローコード開発〔活用〕入門』
著者:株式会社FIXER
監修:日本マイクロソフト株式会社 春原朋幸 曽我拓司
本書籍では、本記事でもご紹介しているノーコード/ローコード開発ツール 「Microsoft Power Platform」の操作方法をわかりやすく解説しています。すぐに現場で応用できるサンプル事例を多数取り揃え、業務アプリやダッシュボードの作り方からデータの取り扱い方まで詳しくご紹介。現場主導のDXを推進したい方にとって、最適な一冊となっています。
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記事投稿日:2023年3月8日